これは僕が大学生の時にあった出来事。

 僕は心霊スポットに行くのが好きだったので、よく友達と一緒に心霊スポットに行っていた。
 その時は、僕、A、B、C、の4人で地元で話題の、不気味な廃墟に行くことにした。
 ここの廃墟は元々は社宅で数十年前まで人が住んでいた所で、冷蔵庫や、洗濯機などの生活用品はまだ残っているようなところだ。
 そして夏の夜、みんなで近くの公園に集まって少し恋バナや世間話をしていた。

 10時になり入ることにした。そこの廃墟は玄関からは入れず窓から侵入するのだ。
 しかも柵が高く、登るのも一苦労。やっと入れた僕達は、休憩を取りながら全部屋を回ることにした。
 霊が出るなどは聞いたことなかったので少し気が抜けていた。
 この廃墟は4階建てで、入ってすぐの部屋の階は何もなく、2階に上がった瞬間、魚が腐ったようなとても強い刺激集が漂っていて少し恐怖を感じた。
 201号室に入った時、僕とBが同時に目を合わせた。他のAとCは何もなさそうに探索している。
 僕らが目を合わせた理由は、3階から普通の人が出す足音ではなく重いものを運んだ時に出る「ズ、ズズーーー、ズ、ズズーーー」と言ったありえない音が鳴ったからである。
 もしかしたら同じように廃墟に来ている人がいるのかと思い、AとCに「上で物音しなかった?」と聞くと
「なんの事だよ。そーゆーのやめろよぉ笑」と笑いながら返された。
 201号室を離れ、202号室に入った瞬間、またあの「ズ、ズズーーー、ズ、ズズーーー」と音がした。
「やっぱ聞こえるよな?」と聞くとBは「うん」と答える。でもAとCは「嘘つくなよ」と言ってくる。
 そして 202号室も離れ、203号室に入った瞬間またあの音、204号室も、205、206と続き、結局全部屋から聞こえた。

 今頃「帰らね?」と僕とBが言う。
 でもAとCは帰ろうとせず先に進んでいってしまうのでしょうがなくついて行った。
 そして301号室に入って僕とBは言葉を失った。なんと、301号室には何も無かったのだ。
 それでは、201号室に入った時に聞こえたあの音はなんだったのだろうか。
 探索し終わりドアを閉めようとした時、階段に血だらけのスーツを着た50歳くらいのおじさんがにこにこしてこっちを見てくる。やはり僕とBにしか見えないらしい。
 僕らは足を震えさせながらAとCを置いてすぐ公園へ走った。何回転んだことか。
 すぐ後にAとCも公園に来て「どうしたんだよ」と聞かれ今まであったことを全て話した。

 AとCには謎の物音もおじさんも聞きも見もしなかったと言う。
 家に帰りすぐ2階の自分の部屋のベッドに入りうずくまっていると屋根裏から「ズ、ズズーーー」とあの廃墟で聞いた音がしたのだ。
 とりあえずスマホで助けて欲しかったのでAに電話しようとしたのだが体が動かない。
 すぐ横にスマホがあるのに。そう金縛りになっていたのだ。
 少し経ち、金縛りも解け、スマホで金縛りにあったとAに言うと「俺もだよ」と言われビビった。
 Bにも聞いたがBも金縛りにあっていたらしい。そう、Cも金縛りにあっていたという。
 気味悪いなと思い1階のリビングに飲み物を取りにドアを開けた瞬間、あの血だらけの男が立っていたのだ。
 今度は怒った顔で僕の事を睨みつけてきた。その後の記憶は気絶したのか、いつの間にかベッドで横になっていた。
 AもBもCも同じ体験をしたそうだ。それからは心霊スポットや廃墟に行くことは辞めた。
 そして謎の物音も謎の血だらけの男に会うこともなくなった。
 一体あの男は何を伝えたかったのだろうか。

朗読: 思わず..涙。
朗読: ゲーデルの不完全ラジオ

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