夢と現実

 今から話すことは、私が定期的に見ている夢と、その夢を見た後の出来事についての話です。
 拙い文章ではありますが、最後まで読んでいただければ幸いです。

 この夢を初めて見たのは小学生2年生の時でした。
 夢の内容というのは、真っ直ぐに続いている一本の道をただただ歩くというものですが、見る回数を重ねるごとに段々と変化しているのです。
 また、この夢を見て起きた日には必ず自分に何かおかしな出来事がきまって起こるのです。
 最初に見た小学2年生の時では学校の行事でクラスごとの演劇があった日です。
 ステージ裏で自分の出番を待っていた時、「次、出番だよ。ほら」と声が聞こえて後ろを振り向いた時でした。
 聞こえた声は男の子だったのに後ろに居たのはクラスの女の子。
 聞き間違えかなとステージに振り返った時、反対側の舞台袖に全身真っ白い一枚の布を被ったような人が一人で立っていました。
 その瞬間周りの音が置いていかれて、その白い布を被った人と自分だけの2人の空間にいるような感覚になりました。
 恐怖、というより何も感じない、無に近い感覚でした。
「あんな人、さっきまでいたっけな」と疑問に思い、後ろの子にあの役の子何してるのかなと尋ねたところ「え? どこにいるの?」と言われ振り返るとそこには自分の役を終えた友達が数人待機していました。
 瞬間遅れていた音が全て元に戻っており、それ以来その白い人は見えずただ自分の見間違えなんだと思いました。

 次に夢を見たのは中学2年生の夏の日のことでした。
 その時の夢は夕暮れの道を1人で歩くと言ったものでした。
 とても赤く、どこか憂いを帯びているかのような真っ赤な夕日を追うように歩く夢です。
 正面からは誰かが歩いてくるのですが、誰かわからない。
 輪郭がぼやけた状態で、ようやく見えるかどうかのタイミングで目が覚めました。
 小学生の時に見た夢と雰囲気がとても酷似している為、強烈に印象に残っています。
 この当時は塾に通っていた為家に帰る時間は21時を過ぎていました。
 家はマンションで20時を過ぎると通路の電気が消えるようになっていました。
 2,30メートルあるマンションの廊下を歩いていると、反対側から革靴を履いて深い帽子を被ったコートのおじさんが歩いてきます。
 自分は「こんばんは」と声をかけたところ「おやおや、こんばんは。こんな時間までご苦労様」と声をかけられました。
 その男の人とすれ違った瞬間、空間が一瞬無音になり自分がどこか違う世界に飛ばされたかのような感覚になりました。
 音や匂い、空気までもが全て異質なものに感じられて気分が悪くなり、廊下の真ん中で立ち止まってしまいました。
「あれ、あの人そういえば革靴を履いていたよな。何で足音も無くなるんだ?」と疑問に思い振り返ろうとした瞬間、耳元で「振り向くな」と掠れたおじいさんの声が聞こえたのです。
 瞬間鳥肌が立ち、急に足が動くようになった為急いで自分の家がある階まで向かったところ急に足音が。
「カツッ、カツッ、カツッ」と足早にこちらに向かってくるのが聞こえてきます。
 さっきまで聞こえてこなかった足音が何故、と混乱しながら自分の家の前まで急ぎ、鍵を取り出し玄関扉を開けて鍵をかけました。
 家に入った瞬間に足音は途絶え何も聞こえなくなりました。
 恐る恐る玄関の扉についている覗き穴を見ると、目の前にはコートのおじさんの後ろ姿が目の前にあり、「しょうがない。しょうがない」と言い目の前をさりました。
 もう大丈夫だと安堵し、家にいた母に話しかけたところ「仲良くしているこのマンションの管理人さん。今、息を引き取ったって」と言いました。
 あの時に聞こえた「振り向くな」と言った声は管理人さんだったのでしょうか。

 次に見たのは大学生の時です。
 自分が音楽系のサークルに所属し、社会人になった現在でも親交のある先輩方と宅飲みをした帰りの出来事です。
 その日見た夢は夕暮れの道を歩く、あの日の夢と全く一緒のものでした。
 ここまでは前に見た時と一緒だったのですが、あの時と決定的に違うのは、正面にいる人がこちらに向かって走ってくるのです。
 自分は「この夢は最後まで見てはダメだ。早く夢から覚めろ!覚めてくれ!!」と強く念じたところ顔が見えるか見えないかの距離まできたところで目が覚めました。
 体からは夥しい冷や汗をかいてとても気分が悪い寝起きでした。
 はっきりと顔は見えなかったのですが、うすら微笑んでいる女の口元が見えたのは覚えています。
「今日は何かあるかもしれない。授業が終わったら大人しく帰ろう」と肝に銘じ学校に向かいました。
 しかしこの日は昼休みにサークルの定例会がある日でサークルのメンバー全員が集まらなければならない日でした。
 参加したところ先輩にどうしても今日お酒が飲みたいから、家に来てくれないかと懇願され、今朝の夢のことが頭をよぎりましたが渋々了承しました。
 授業が終わり、サークルで頃合いの時間になるまで暇を潰して、いざ先輩の家でお酒を飲み始めると今朝の夢のことはすっかり忘れていました。
 次の日1講からあるから今日はもう帰るわ。と伝え自分1人だけ帰ることに。
 あたりはもう真っ暗で同じ方向の友達もいない為、好きな音楽をイヤホンで聴きながら帰路についていました。
 鼻歌混じりで帰っていた時正面の街灯の下に女の人が1人立っていました。俯きながら何かボソボソと呟いているように見えました。
 なんか気色悪いな。とイヤホンの音量を上げ横を見ずに足早に通り過ぎ少し歩いた先で、またあの時の感覚に陥りました。
 自分が別の空間に飛ばされたかのような感覚です。
 まずい、まずいまずいまずい。と自分の第六感が警告を告げています。
 漠然とした恐怖が自分を覆う感覚があの時よりも鮮明にからだに突き刺さってきます。
 全身が恐怖で覆われ身動きが取れなくなって固まっている時、後ろの方でハイヒールの靴音が聞こえてきます。
「カッカッカッカッ」と段々と足音が大きくなるにつれ自分の心臓の音が嫌に大きく聞こえてきます。
 音量を上げていたはずのイヤホンから流れる音楽は全く耳に入らずヒールの音と女のボソボソ喋る声だけが段々と近づいてきます。
 そしておよそ自分の真後ろに止まったと思える位置に女が来た時、耳元に吐息がかかり 「ああぁ。やっぱり。あは、違った」 と呟きました。
 この言葉が聞こえた瞬間、イヤホンから突然昔のテレビから流れる砂嵐のような、ザーッといった音が最大音量で耳に入ってきた為、咄嗟にイヤホンを引き抜きました。
 瞬間体が動くことに気づき、そのあとは全速力で帰路につきました。

 今話した三つのお話以外にも夢はたびたび見ているのですが、その度に怪奇現象に見舞われています。
 そして夢を見る回数が増える毎に景色や建物、出てくる人物など記憶に残る部分が鮮明さを増していってます。
 現在26歳になりますが今年はまだこの夢を一回も見ていません。
 最後に見たのは社会人一年目の時でしたが、その時も怪奇現象に遭遇しています。
 現在は病院で勤務している為、もしこの夢を見た時に職場で何かあったら耐えられる気がしません。
 拙い文章ではありますが、ご拝読いただきありがとうございました。

朗読: ゲーデルの不完全ラジオ

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