俺が鯉を嫌いになった理由

俺がまだ6歳くらいの時の話。
よく遊びに行っていた公園には大きな池があり、沢山の鯉が泳いでいた。
公園には鯉の餌の自動販売機があって自由に餌をあげれる事から、

池の鯉はどんどん成長していった。

池の縁の柵前に立って餌を池に落とすと、
眼下で我先に凄まじく奪い合いする鯉の姿が面白く、
俺は家族と公園に遊びに行く度に餌をあげて楽しんでいた。

そんなある日のこと、
いつもの様に鯉に餌をあげていると、
眼下で物凄い争奪戦を繰り広げている鯉の群衆、
突然その中心から男の子が飛び出してきた。
白いTシャツを着た全身ずぶ濡れの男の子。
ニタニタと満面の笑みを浮かべながら、
突き出した両手を柵から頭を出していた俺の首筋にまわして来て、
首筋に濡れた手の感触がした………瞬間、俺は池の中に落ちていた。
自動販売機で購入した、まだ半分以上残っている鯉の餌と共に…………。
さいわい親が近くに居て大事に至る前に助けられたが、
あの時受けた荒ぶる鯉の打撃、吸いつき、ぬめり、悪臭、水責。
長い年月が経ったが、今でも俺は鯉が嫌いだ。
ちなみに餌をあげている俺の様子を終始見ていた親が言うには、
俺は突然1人で池に頭から吸い込まれる様に落ちて行ったらしい。

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