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13段目の大鏡

母校のS高校には、校庭の片隅に合宿施設があった。
古い木造の二階建てで、クラスや部活動単位で生徒たちが利用していた。

私も数度、泊まったことがある。

それはとても古い建物で、人の背丈より大きな振り子時計やメラメラ歪んだ窓ガラス、なめらかに角のとれた木の階段、踊り場の大鏡など、時代を感じさせるものが沢山あった。
S高校で語られた不思議のひとつの「大鏡」は、ここにある。

たぶん、試した生徒は何人もいただろう。 手鏡をポケットに忍ばせて。

友人のAが、 「試したこと? あるよ、手鏡もっていった」 と笑って教えてくれた。

木の階段は踊り場まで12段あって、一階にある振り子時計が日付をまたぐとき、ボーンボーンと重い鐘の音が鳴りはじめたら、それに合わせて一段一段階段を上るのだという。そうすると12回目には踊り場まで上がるはずだ。
「でもね、あの古時計、13回目を打ち鳴らすことがあるの。そうすると何故か階段も、13段目があるの」
もし13段目に上がることができたら、手鏡をとりだして、踊り場の大鏡と合わせ鏡にするのだ。
手鏡を覗けば自分の顔と、背後の大鏡に映る自分の後ろ姿が見えるはずだ。

その後ろ姿にひとつだけ質問をすると、どんなことでも真実を、自分であるはずのソレが答えてくれるという。

ただし、それが振り向いてこちらを見る前に、手鏡を床に叩きつけて割らなければならない。
でも中には、たまたま割れない手鏡もある。
そうしたら、もう・・・。

「その人はお終い。その人と、鏡のなかのアレが、入れ替わっちゃうんだって」
けれど周りには、それが今までの友人なのか、鏡の奥からきたアレなのか判らないそうだ。
友人のAに、ソレに何を尋ねたのか訊いたところ笑って答えなかった。

それから自分は、もとの本当のAだから・・・と言った。

本当かな、それ。

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