今年もウチの庭にアジサイが咲いたよ。
青いアジサイたちの群れの中に 一部分だけ赤いアジサイが咲いてます。
アジサイの下に死体が埋まっていると、 そこだけ色が変わるんだ……って、 母さん、前にそんなことを言ってましたよね。
だからボク、実証してみたくなったんです。
そしたら、本当に色が変わりました！
母さん、いつも嘘ばかり言うから半信半疑 だったんだけど、今度ばかりは本当でした。
疑ってごめんなさい。 とっても綺麗な色になってます。
母さんに見せられないのが少し残念だけど。
父さんが海外から帰ってくるまであと半年。
アジサイももう枯れてる頃です。
父さんにもこの色、見せられなくて残念です。
母さんは心配しなくて大丈夫ですよ。 ちゃんと父さんの入る場所も用意してます。
来年のアジサイは父さんが綺麗に咲かせてくれることでしょう。
……そう天国の母さんに語り掛けていた時、 ウチの庭を覗き込む人影がいた。
あれは、隣に住むお婆さんだ。
アジサイの花をじっと見つめている。
ヤバい、もしかしたら気付かれたのかも。
あのお婆さんもアジサイの色が変わる理由を 知っているのかもしれない。
……幸いにもウチの庭は広い。
父さんより先に他人を入れるのは気が引けるけど 仕方ない。
ボクは鏡を見ながら笑顔を作り、玄関を出て、 周囲に人がいないのをよく確かめてからお婆さんに声をかけた。
「こんにちはお婆さん、お婆さんは 何色のアジサイになりたいですか？」
