小学生の頃の話。私が通っていた小学校では月に一度、校長先生と一緒に給食を食べる日があった。
今日のメニューはカレーライス、サラダ、ゆで卵、それと牛乳。
みんなカレーの人参だけはそのまま残している。私も苦手で食べない。
「……みんな、人参を残すのかな?もったいないな」
校長先生の言葉に私達は顔を見合わせた。
「だって、先生は嫌いなものは無理に食べなくても良いって」
私達が口々に言い訳をすると、校長先生は少し悲しそうな顔になった。
「でもね、好き嫌いをしているといつか困るよ。怖いことになる」
その日、家に帰ると晩ご飯は母特製のカレーと山盛りのゆで卵だった。
私は大喜びでカレーを食べ、最後のお楽しみに取っておいたゆで卵の殻をむいて一口食べた。
すると、なんだか糸みたいなものが歯に当たるし噛み切れない。
私は口の中に指を入れてその糸のようなものを取り出した。
それは髪の毛だった。
その髪の毛はものすごい長さで、引っ張っても引っ張っても出てきた。
私は思わず口の中に入っていたゆで卵を全部ティッシュに吐き出した。
でも出てきたのは白身や黄身では無く、丸めた髪の毛だった。
あれからまたカレーの日がきた。 私は人参が苦手。
あの日以来、ゆで卵も苦手になってしまった。 カレーも食べられなくなってしまった。
ゆで卵やカレーの中に変なものが入っているかもと思うと、それだけで食欲が無くなる。
でも、他にも美味しい物は沢山あるから、大丈夫だと思う。
………今はまだ……。