死神の拳銃

 以前にも紹介したことがあるのですが、 ボクの元同級生に警察官になったやつがいます。 (※「甘くて、臭い匂い」参照) そいつと久しぶりに会う機会があり、 またいろいろ聞き出してきました。
 警察と言う組織は、表向きはお堅い職場だと思われていますが、 実はその仕事柄か、オカルト的な話がたくさん転がっている不思議な組織でもあります。
 「殺したヤツの霊が毎晩出るから」といって自主した犯罪者もいれば、 監房に居ても霊に憑りつかれ、とうとう精神を壊してしまうやつもいます。
 あまりに犯人が見つけられない時や、捜索している遺体が見つからない時に、 最後の手段として神社にお参りすると突然発見できたり、 最悪の事故現場で救助を求める女性の声がするので、大掛かりな救助活動をしてみると、 声の主の女性は即死状態で、代わりにその女性の子供が無傷で救助された、なんて話もあります。

 そんな中で、友人から聞かされたのは拳銃にまつわるお話でした。
 ちなみに日本の警察組織が使用している拳銃の種類はみなさんご存じですか? これがけっこう多岐にわたり、日本製のニューナンブ、アメリカ製のS&W、 スイスのSIG、ドイツのH&K、イタリアのベレッタ等があります。
 いわゆる制服警官が持っているのが38口径の回転式けん銃、リボルバー式で、 私服警官や特殊部隊などは9ミリ口径のオートマチック式を使っています。
 そんな拳銃を貸与された警察官が、その拳銃を使って自殺する事件が後を絶ちません。

 これはかなり昔の話ですが、ある警察官が凶悪犯と対峙したあげく、 拳銃を使って射殺する事件がありました。
 もちろん正当防衛ではあるのですが、 当時の左翼系メディアからは袋叩きに合い、警察署内でも執拗に取り調べを受け、 とうとうその警官は自分の拳銃で自殺したのでした。
 彼の古いニューナンブ3インチリボルバーは、彼自身の血に染まったのです。
 それから数年後、自動車内に立てこもる犯人を制圧するため、警察官が発砲。
 これが運悪く犯人の大事な血管を突き破ってしまい死亡する事件がありました。
 これも警官は社会から厳しくとがめられ、結局彼は拳銃自殺してしまいます。
 彼が使ったのも古いニューナンブの3インチリボルバーでした。
 それからまた数年後、今度は警察署内で激しいパワハラを受けていた新人の警察官が、 またしても拳銃自殺をしてしまいます。
 この時に使われた拳銃もやはり古いニューナンブの3インチリボルバーで、 彼はそれ以前に檻から逃げ出した闘犬をやむなく射殺して、世間から非難を浴びていました。
 これらの事件にかかわった拳銃が実は同じ拳銃だったことが鑑識からの報告で分かっています。
 たとえ拳銃自殺であっても、鑑識では念のため弾丸に残る線条痕を調べ、 発射した銃器を特定して記録しています。
 その結果、すべて同じ拳銃が使われていたことが判明したのです。
 拳銃自体は自殺に使われた証拠品でもありますが、 鑑定が終われば一旦管理者に引き渡され、整備されたのちに再び配備されるのです。
 それが三度も鑑識に帰って来たのですから、鑑識でも不審に思ったのか、 三度目でとうとう管理者に廃棄を勧告したようです。
 実際に調べた鑑識の話では、そのニューナンブの木製グリップの裏には 「みんな、死ね」と小さく彫られていたそうです。

 「グリップってね、拳銃を分解掃除する時なんかに一番最初にはずすところなんだよ。 そこをはずさないとサイドプレートも開けられないからね。だから、整備の時に 誰かそれ、読んでるはずなんだけどねぇ……。誰が書いたのかも気になるけど……、 実際にそれで何人も死んでるんだから薄気味悪い話だよなぁ……」
 ボクの友人はそんなことを言ってました。
 その拳銃には、死神でも憑りついていたんでしょうか…。

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