タクミ(従弟/仮名)の部屋に重いロッカーがある。
何故ロッカーがあるのかは、叔父さん達に聞いても誰も知らないらしい。
このロッカーは誰も持ち上げていないのに、ほんの少しだけど浮いている。
「深央姉さん、見て!」
タクミが、そう言いながら下に出来た隙間に手を入れてみせた。
「危ないよ、落ちてきたらどうするの」
私は怖くなって声をかける。
しかしタクミはお構い無しって感じで、何度も隙間に手を出し入れする。
「大丈夫だって!ほら、見てよ!」
私はなんだかすごく嫌な予感がして、彼の手を掴んでロッカーの下の隙間から離れた。
その瞬間、ロッカーが音を立てて床に落ちた。
間一髪だった。
その時、誰のものかも分からない舌打ちが聞こえた。