寂しい

 これは職場の同僚から聞いた話であり、うまく文章に出来なかったらごめんなさい。

 同僚の家族は三人兄弟と母親で、今現在は兄家族と母親が同居、同僚と弟が同じ県内にそれぞれ家族と共に暮らしていました。
 数ヶ月前に母親の癌が発覚し、既にステージは進んでおり余命宣告。
 入院はせず毎週自宅から通院する形になりました。
 母親だけで通院させるのは心配だったので兄弟3人で話し合い毎週交代制で病院に送り届けていました。
 その車内、母親は毎週毎週「寂しいなぁ。あなた達を置いて死ぬんだと思うと本当に寂しい。○○(同僚)も寂しいよね? 1人で死ぬのが怖い」とぶつぶつ呟いていたそうです。
 そりゃ突然に余命宣告されたらそうなるのだろうと、ましてや幼少期に離婚し女手1つで自分達3人を立派に育ててくれた母です。
 いくつになっても子の事は心配なのだろうと……根拠は何も無いけど「大丈夫大丈夫。奇跡が起きるかもしれないし、そんな弱気にならないで。何でも話聞くからね」と受け流していました。
 他の兄弟にも同じ事を言っており、特に一緒に暮らしている兄は「そのうち俺も逝くんだから気長に待ってて」と冗談半分で答えていたそうです。

 そして数ヶ月が経ち、早朝に兄から「母さんが亡くなってるかもしれない。息してない気がする。どうしたら良いか」と慌てた様子で電話がかかって来ました。
「救急車を呼ぶか、病院に電話した方が良いと思う。俺もすぐ向か……」
 ブチッと、突然電話が切れました。
 まぁ兄もそれだけ慌ててたのだろう。折り返しの電話がかかって来るだろうし実家に向かう準備をしようと妻を起こし話し合っていたら、プルルルルルル…。
 電話がかかってきました。
 ディスプレイを見ると”兄嫁”。
「はい、もしも……」「○○(同僚)くん? 夫が電話持ったまま倒れてる! 動かない! どうしたら」と。
 思考が停止しました。
 そんな事あるのか? 電話口では半泣きでパニックの兄嫁。
 とりあえず「救急車を2台呼んでください。すぐそちらに向かいますので」
 すぐに着替え搬送先の病院へ。
 結果を言うと兄は亡くなりました。母の亡くなった数時間後に。
 兄には持病はなく外傷も無かった為”突然死”との事でした。
 短時間の間に2人も家の中で亡くなったので警察の対応には時間がかかり、葬儀は2人1緒に行いました。
 病院の医師にも、警察の方にも、葬儀をしてくれた住職の方にも「こんなパターンは中々ない」と言われました。
 葬儀の後も兄嫁と共に色々な手続きに追われ、ようやく大体の事が終わった時、兄嫁がポツリと「お義母さん……夫連れて行っちゃったのかな。お義母さんが寂しいって言った時、私も娘も大丈夫だからね何とかなるよって励ましてたけど、夫だけは俺も逝くんだから寂しくないって言ってたの。私はその言い方ずっと嫌だったけどお義母さんがじゃあ寂しくないねって笑ってたからいいかって思ってた。私が止めてたら……」と。
 これで話は終わりです。
 3週間前の出来事であり、今のところ同僚は元気に働いています。
 また何か進展があれば投稿させていただきますね。

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