小学生の頃の話。
音楽の授業が始まる前、トモヤが言った。
「なぁ知ってるか? お前のハーモニカの中に虫が入ってるぜ!」
すかさずマリが睨み返した。
「ちょっとやめてよ!いるわけないじゃん!」
「本当だよ、俺見たもん!」
「バッカじゃないの?」
マリがハーモニカを振ると、カラカラと音がした。
「ほら、やっぱり虫が入ってるんだよ」
「砂利とかゴミが入ってるんだよ、多分」
私はマリをかばって、しばらくマリのハーモニカを振り続けていたら、音が聞こえなくなった。
代わりに今度は、「ピチャン、タプン」という音が聞こえ始めた。
「……水が入ってるんじゃない?」
「やめてよ、深央まで」
マリが恐る恐るハーモニカを傾けたら、穴から血が流れ出てきた。
驚いて一緒にハーモニカを覗いて見ると、奥の方で小指の先ほどの大きさの人間が、血まみれになって倒れていた。