「失礼しまーす」
中学生の頃、先生に用事があって職員室に向かった。
ドアを開けると、隣のクラスのアイがいた。
その横には背の高い女の人が立っている。
お母さんかな。
その人は先生に向かって何か怒っていた。
「うちのアイが、イジメをしてるって言うんですか⁉︎」
「いや、それはですね……」
先生は困った顔をしている。
アイ本人は、時々ニヤニヤと笑ったり、舌を出したりして落ち着きがなかった。
〈アイはイジメのリーダー〉だって、隣のクラスの子からそう聞いたことがあった。
さっさと用事を済ませようと中に入った時、変な匂いがした。
魚の水槽の匂いに似ていて、アイの近くからその匂いがしている。
(……あ…ええっ⁉︎)
アイのお母さんの顔が銀色になっていた。
しかもそれだけでなく、手や足、首に鱗が生えてきている。
じっと見ていると、今度は頭に角が飛び出してきた。
そして、スカートの裾から長くて太い尻尾が伸びてきた。
その姿はどこか、トカゲに似ていた。
『イジメハ ガッコウノ セキニンデショー!』
そう言いながら開いた口には、牙が並んでいる。
驚いて動けないでいると、後ろから担任の先生がやってきた。
「……よく来るんだよ、あんなのが」
ため息をつきながら、私の顔を見て笑った。
泣きそうな顔だった。