友人の夢

不思議な夢は今まで3、4回見たことがあるが、これは今から8年ほど前に見た不思議な夢のひとつ。

 

私が確か高校生の時に見た夢だったと思う。

私は夢の内容はよく覚えている方で夢にはよく小中学校の友人が出てきた。

その日みた夢にも友人が出てきたわけだがいつも見ている夢とはちょっと違っていたので、

内容に関しては今でも思い出せるほど印象に残っている。

 

夢の中で私は昔住んでいたマンションのエレベーターホールに立っていた。

エレベーターホールから外の景色が見渡せたのだが、

何故か周りは水没していて私がいるマンション以外は海しかなかった。

ちなみに私は7階に住んでいたので多分この時も7階だったと思う。)

 

その光景に夢の中で戸惑っていると、遠くから何かがやってくるのが見えた。

波に揺られた点のようなそれは私の目の前に一瞬でやってきて、

何かと思ったら木船に乗った私の友人だった。

 

友人は私の顔を見るなりにっこりと笑い手招きしてきた。

 

乗れと言われているような気がしたので、私はとりあえず友人が乗っている船に乗った。

 

船に揺られながら私は友人と楽しく談笑していた。

(しかし、私の夢は基本無音なのでこっちが口パクして相手が口パクで返して

なんとなく相手が「こう言っているんだろうな」と想像する感じなのだが。)

 

友人と少し話していると船はいつの間にか駅の改札の前にたどり着いた。

友人が先に降り、私が降りると友人がちょうど改札を通ったところだった。

 

笑顔でこちらを見て私を待つ友人。

財布の中に定期はいつも入れているけど果たして…と思い、

いつも財布を入れているポケットをまさぐってみると財布が入っていた。

 

良かったと思い、自動改札機に定期が触れるようタッチすると「パンパーン」

残高不足の時になるような音がこの時はっきり耳に聞こえた。

 

そう夢の中なのに音が聞こえたのである。

 

そして、その音にはっとした私は何かを悟ったような顔になり、

笑顔から驚いた顔に変わった友人に「ごめん。まだそっちにはいけない。」と言った。

 

何故かこの時の自分の言葉も鮮明に聞こえた。

 

その言葉を聞いた友人は驚いた顔からゆっくりと真顔に変わっていった。

何を言い返すこともなく、黙って私のことを見つめていた。

 

とそこで夢から醒めた。

私はゆっくりと体を起こし、違和感を覚え目元を拭った。

私は涙を流していた。

 

そして、思い出した。

 

夢に出てきた友人。

彼は中学生の頃に癌で亡くなっていたという事実に。

あの改札を通っていたら私はどうなったんだろうか。

 

最後に自分が言った「ごめん。まだそっちにはいけない。」という言葉。

本当考えていったわけじゃなくて、自然に出てきた言葉だったのだが、

もしかして、その改札は天国にでも続いていたのだろうか。

 

彼が亡くなってから何度か彼と話したり、遊んだりする夢は見ていたが、

その夢を見てからは彼の夢は今日に至るまで一度も見てない。

朗読: 朗読やちか
朗読: 繭狐の怖い話部屋
朗読: 怪談朗読と午前二時

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

閉じる