お盆に

お盆の季節ですね。

皆様は会いたい方はいますか?

これは、関東に住むお友達から聞いたお話です。

 

広い北国の、私の住んでいる地域ではあまりやらない風習でしたので、とても新鮮なお話でした。

仕事で仲の良いまっつんが高校3年生の時のことです。

 

夏休み、空き地で友達数人と、ゆるーいソフトボールごっこをしていたそうです。

日が暮れて周りが少しずつ暗くなってきました。

来年は皆社会人。

皆と一緒に集まれるのはこれが最後とわかっていたので、なかなかやめられなかったそうです。

 

空がぼんやり暗く、地面を転がるボールは、小さな茂みに静かに吸い込まれていきました。

まっつんはすぐに駆け寄り、靴越しに探りますが、靴先にそれらしい感触はありません。

 

そして思い出した様に、スマホカメラのライトで茂みを照らしました。

今の時代よりも少し画質の悪い画面には、対象物の焦点が定まらない光と、紫色の闇がざわざわと映るだけでした。

 

とうとうしかたなく、地面に膝をつき、スマホを持った腕を茂みにいれました。

光に照らされた部分を直視した瞬間。

 

ようやく見つけたボールの横に、ほんとうに真っ白な、

小さな子供が正座してボールをじぃっと見つめていたそうです。

心臓が爆発寸前のまっつんはどうにか悲鳴をあげて、茂みから手を引き抜きました。

 

友達は皆駆け寄り、どうした大丈夫かと土まみれのまっつんを立たせてくれました。

一人の友達が地面に落ちたスマホを広い、画面を確認するや否や、突如絶叫し、

震える指先で必死にスマホを操作していました。

 

その時は誰も見たい等と言うこともなく、きっと削除してくれたんだろうなと思ったそうです。

そうして皆何も言わず、帰る支度をして別れたそうです。

 

まっつんは不安と恐怖に落ち着かなかったそうですが、

実家の玄関の明かりを見て、ようやく落ち着いたそうです。

 

そして玄関のドアを開けようとすると、ふと足元に何かがあることに気がつき、はっとしました。

「足元にね、きゅうりとなすがあったんだよ!」

私はポカンとしました。

「え?なんで野菜があんの?」

知らないの?嘘でしょ?オチにならんじゃん!」

と、爆笑されてしまいました。

 

まっつんは私にお盆の風習を教えてくれました。

足のついたきゅうりは、ご先祖様のお迎えの馬、足のついたなすは送おりの馬、

自分のご先祖様の為にお盆に用意するのだと。

 

だとすると、その白い子供はいったいどこに帰るのだろう。

どんな魂も、必ず戻ってくるのだろうか。

そう思うと、少しゾッとしてしまうのは私だけでしょうか。

 

その後ボールはどうしたの?と聞くと、「そのまま」と答え、困った表情で笑っていました。

皆様の家ではお盆に飾っていますか?

おもてなしの馬に乗ってどうか皆様のもとに帰って来られますように。

朗読: 繭狐の怖い話部屋

1件のコメント

  • らふらんすぴ より:

    玄関の足元にあったのはボールだと思ってたので、なんで野菜?と思ってたくだりが抜けてました 笑

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