九人の乙女

私はオカルトや都市伝説が幼少から好きで、
今でも大好きですが 幽霊や前世来世などは現在も一切信じておりません。

そんな私が体験したいくつかの不可思議現象のうちのひとつをお話します。

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私は映像の方の俳優をしているが、10年ほど前にロケで北海道を訪れた。

場所は稚内。 かなり閉鎖された空気を強く感じる土地だった。

冬場の長期ロケだったので、オフの日も散策などをして体力を保つ。

その日は天気の予報だったので ホテルからほど近い稚内公園へと暗いうちから出かけた。

雪積もる階段を上っていくと途中に神社もあり
怖がりなひとならば決して一人では行かないであろうかなり暗い山道。

植木の仕事もしているので、境内や公園の樹木、
雪吊りの松などを見たりしながら高台のほうへと上っていく。

薄っすらと東南の空が白けてきたころ、広場までたどり着き 樺太犬の記念碑などを見て廻る。

そして公園の端、海が望めるほうへと歩みを進めていくと
突然、頭を締め付けられるような感覚に陥り、
悪寒というのだろうか、頭がフラフラとして酸欠のような症状に。

「これはまずい、風邪でもひいたか?」と、翌日からの撮影に支障が出まいかと
早々に引き上げようと踵を返した。

空はだいぶ明るくなり、公園全体、そして遠くの視界も少しずつ開けてきた。

自動販売機で暖かい紅茶を買い、それを飲みながらゆっくりと戻る。

途中に野生の鹿も多く見られ、心なしか辺りの空気が澄んできたように感じた。

すると先ほどまでの体調の悪さがウソのように無くなって、 足取りも軽くなったので、
途中で引き返したその先へ行ってみようと再び公園の奥のほうまで歩いていく。

そこには、先ほどは真っ暗で、その存在がよく確認できなかったひとつの石碑があり
そこに書かれていた文字を見て、私は一瞬で凍りついた。

「…さようなら、さようなら」

それは『九人の乙女の象』と呼ばれるもので 1945年のソ蓮軍侵攻の際、
電信局で最後まで通信を続けた 九人の女性交換手を英霊として祀ったものだった。

彼女らは最後の通信を終えると、侵入される直前、全員が青酸カリを飲み自決した。

石碑には「皆さん  これが最後です さようなら さようなら」と記されている。

霊魂などを信じない私なので、すべては偶然の賜物だとは思っているが、
その土地の持つ負の力や、人間の一念心を強く考えさせられる出来事だった。

ちなみに、その時に撮った石碑の写真はデジタルノイズが入り
上から9割くらいが灰色に潰れて、カメラに収めることができなかった。

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乱筆乱文失礼いたしました。 幽霊話などの動画も楽しいですが、
歴史に埋もれているオカルトなども またいくつか検証して欲しいです。

ではまたお便りします。 さようなら さようなら

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