場違いな者

昔、某国際空港に勤めていた時の体験。

その時は確か、ツアーの団体客やら、到着便の出迎えに来た人やらが、
まばらにいる到着ロビーを作業に向かうため同僚のI氏と一緒に、下らない雑談をしながら歩いてた。

もちろん、最低限人にぶつからないよう前方は見てるのだが、
なぜか「それ」に気づいたのは
およそ15メートル(ロビーに等間隔で立ってるデカい柱2本間分)ほどまで接近した辺りだった。

異様過ぎて超目立つのに。

あまり人様をマジマジと観察するような事はしないのだが、さすがに見てしまった。

ドリフの志村けんが演じてた、ビン底メガネの汚い神様みたいなのを、
さらに泥水で洗ったような頭髪。 顔は青黒く目は虚ろ。口は半開きだが、歯は見えない。

日中韓どこか分からないが東洋人女性。

年齢的には5〜60? 車輪に巻き込まれたボロ切れを繋ぎ合わせたような着衣を纏い、
足には数千キロは踏破したかのようなズタズタのサンダル。

持ち物も見当たらない。

改めて言うが、某国際空港の到着ロビー。

場所が場所だけに、普通に人間と考えても間違いなく120%濃縮還元気味に不審者認定レベル。

なのだが、そこら中にいる警備員どころか空港関係者、
利用客ももちろん誰もまるで気にしてないというか気づいてない様子。

そんなのが、前に進む気があるのか疑わしいほどヨタヨタとしながら、真正面から近づいて来る。

で、こっちは普通に歩いてるので、程なくすれ違う。

I氏側で。袖が触れるくらいの至近距離を。

すれ違ってすぐに、I氏に「今の人ヤバくない?」とすぐさま聞いたが
「え?何が?全然気付かなかったけど…視力悪いからなぁ…」と。

視力の問題ではない気もするものの、
振り返って、ほらあの人!と言おうとしたが、この手の話のお約束の如く、既に姿はなかった。

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