北海道胆振東部地震で、人形に助けられた話です。
私には、三年ほど前から大切にしている人形がいます。
人間の三分の一のサイズ(60cm)で、大好きなキャラクターの姿をした人形です。
震災の前日、その人形を専用のバッグに入れて出かけ、
その日の夜、家に帰ってきてから髪を梳かしたり服を着替えさせたりしていると、
膝から下の関節が緩くなっていることに気がつきました。
具体的に言うと、両膝と両足首。
その人形は、持ち主の好みでパーツを付け替えられるようにできているため、
外れることはそんなに珍しいことではありません。
ですが、ぶつけた覚えもないのに、勝手に抜け落ちてしまうほど外れやすくなることはないはずなので、
私はネットで色々調べながらなんとか直そうと試行錯誤していました。
そうこうしているうちに、突然耐え難い眠気に襲われ、
何も考えられなくなり、歯磨きやシャワーもせずにそのまま床で横になり、眠りに落ちました。
次に私を目覚めさせたのが、午前3時の大地震でした。
私の家はちょうど震源地にあったため、初めて震度7を経験しました。
食器棚から落ちて次々と割れる食器や、水が溢れる水槽、
倒れるテレビやパソコンに怯え、人形を抱きしめながらただ叫ぶことしかできませんでした。
私は本の虫で、二階にある自室には壁じゅうの本棚と、隙間なく詰められた本がありました。
家族も集まり、少し冷静さを取り戻した私は、二階の自室を見に行くことにしました。
そこにあったのは、散乱する本と、フィギュアたち。
そして本棚に押しつぶされて壊れたベッドです。 私は背筋が寒くなるのを感じました。
もし床で寝ずにいつも通りこの部屋で寝ていたら。
私は、ちょうど人形と同じように膝から下に大怪我をしていたでしょう。
最悪の場合、命も危険だったかもしれません。
すぐ人形の元へ行き、膝から下を確認すると、
不思議なことになんともなかったのです。
あんなに外れやすかった関節が、いつも通り動かせるようになっていました。
きっと、私に危険を知らせてくれたんだと思います。
私はこれまで以上に、この先ずっとこの人形を大切にします。
余震はまだ続いていますが、今度は私がこの人形を守る番、と心を強く持っていきたいと思います。