今はもうなくなったのですが、当時厚木にあった営業所で体験した実話です。
その営業所に行く時間は必ず午前1時過ぎになり、人は誰もいませんでした。
営業所の扉は、鉄製で大きく、両開きの引き戸タイプで古い倉庫でした。
僕は怖い話が好きなので、イヤホンで怖い話を聞きながら、入り口から入る街灯の明かりだけで作業するのがいつものスタイルでした。
作業中は倉庫の真ん中までしか行くことはなく、もともと真ん中には物が置いてあり、倉庫の奥は見えない状態になっていました。
作業ももう終わるという頃、奥からものすごい音で、バタン!と扉が閉まるような音が聞こえ、怖い話を聞いていたのもあってかなり驚きました。
携帯のライトを付けて見に行くと、人がいる様子も、物が倒れた様子もありません。
少し怖くなったので早く作業を終わらせようと思い、戻るため入り口の方を向くと、真ん中辺りに人が立っていました。
なんだ、いるんじゃん、と思っていちに歩歩いた時、その人がこっちに向かってすごい勢いで走ってきました。
びっくりして立ち止まると、その人は僕を横切り倉庫の奥に消えていきました。
振り向くと、扉の音など何もしていないのに姿がないのです。
しかもその人は全身真っ黒で、人の形をした何か、のようでした。
さすがに怖くなり、残りの作業を終わらせ、帰ろうと入り口の鉄扉に手をかけた瞬間、倉庫の奥からバタン! と大きな音がしたと思ったら、人の形をした何かがこっちに向かって猛ダッシュしてきたのです。
急いで扉を閉め南京錠をかけて倉庫を離れました。
翌日会社の人にその話をしたところ、何人かその営業所で怖い体験をしたというのです。
入り口の外から覗き込むように顔だけ出してニコニコ笑うおばあちゃんとか、襟首を引っ張られたとか。
今はもう行くことがなくなったのでなんだったのかはわかりませんが、確実にあの、人の形をした何かは存在していました。