私と1/3程かぶっていました

 つい先日の出来事です。

 掃除洗濯などの家事を忙しくこなしていた朝、リビングのドアから出ると廊下に女性が佇んでいました。
 慌ただしくドアを開けて廊下に出たため、「あっ」と思った時には、その女性は私と3分の1ほど体がかぶっていました。
 女性の顔は私の肩に乗るような距離にあり、どこを見ているのかはっきりしない無表情な印象でした。
 今の家には7年前に家族で越してきました。
 当時、築10数年になる一軒家でしたが、広さと安さが魅力で家族で即決しました。
 しかし、入居して間もなくおかしな影を見ることになりました。
 我が家は玄関から真っ直ぐ伸びる長い廊下があり、突き当りが浴室になっています。
 廊下の左右はリビングや階段などがあります。
 そのリビングにいると、廊下を浴室から玄関に向かって黒い影がスーッと通っていくのを時折見かけるのです。
 初めは引っ越しで疲れているのかと思い、誰にも言わず気にしないようにしていました。

 ところがある日、長男が言いにくそうに私に相談してきました。
「黒い影を見かける」と。
 私だけが何か感じるのなら何もないことにしたいのが本音でしたが、息子も同じものを見ているので否定はできず、「じゃあ、お父さんにも聞いてみるね」ということになりました。
 主人は、霊的な現象を否定はしませんが、「元気がないとそういうものに出くわす」「実生活を元気にやっていこう」という考えの人間です。
 この家に越してきてからも、強くて明るい前向きな言動は何も変わっておらず、こんなことを相談したら「君、今元気ないの?」と心配されるのではと不安でした。
 しかし、私と息子が見たものについて相談してみると、意外なことに「オレも見たよ」と即答でした。
 友人知人に霊能力者はもちろん、霊現象に関心がある人さえ皆無で、黒い影を時折見かけるまま、日々の忙しさに流されて過ごしていました。
 そして、越してきてから数年が経ち、隣近所の人と交友ができてきた頃のことです。
 隣の奥さんから「ちょっと変な話だけど」とお話がありました。

 内容は、私たち家族の前の前の住人が「この家は、死者が出たなどいわゆる事故物件か」尋ねてきたというものと、その次の住人はたった1年で転居したとのことでした。
 隣人は長くこの地に住んでいるそうで、私たちの家に以前に死者が出た話は聞いたことがない、その家が建つ前は駐車場だったとのことです。
 元々面倒臭がりの私は、「だったら、黒い影を見る程度ならこのまままでも大丈夫そう」「でも、もしはっきり見たら怖いだろうなぁ」などと思っていました。

 そして、つい先日の出来事です。
 掃除洗濯などの家事を忙しくこなしていた朝、リビングのドアから出ると廊下に女性が佇んでいました。
 慌ただしくドアを開けて廊下に出たため、「あっ」と思った時には、その女性は私と3分の1ほど体がかぶっていました。
 全て実話で現在進行中です。

朗読: かすみみたまの現世幻談チャンネル

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