自分は心霊現象により恐い思いをしたことや、
初めにお断りしておくのですが、どれも短くて、
私の家は、私、妻、長男、次男の四人家族です。
長男の話
あれはまだ次男ができる前で、
その頃私たち家族は、3人でよく旅行に行っていました。
行く時はいつも自家用車を利用していたのですが、席は決まって、
19歳になった今でも長男は、「いっつも1人で退屈だったよ」
いつだったか、どこへ行った時だったか、
まだ午前中で、ものすごく天気のいい日でした。
一車線とは言え道は広く、時々対向車とはすれ違いましたが、
私はまるで正面に見える真っ青な空に吸い込まれていくような気分
車の左側は高い壁で、説明が難しいのですが、
やがて坂道を登りきると、壁は完全になくなり、
畑と言っても、林檎か梨か、詳しくはわかりませんが、
(ああ、壁の上は畑だったのか)と、
それから暫くは何事もなく、
左側に広がる果樹園がようやく終わった頃、
「おじいちゃんいたねぇ」と、無邪気な声で言ったのです。
たった今通りすぎた畑、と言うか果樹園以外に、
(ああ、おじいさんがいたのか。農家の人なのかな?)
と思いました。
私は後部座席でひとりぼっちの長男が退屈だろうと思い、
「おじいちゃんいたかあ!」
と、やたら明るい声で即座に言い返しました。
「おじいちゃんいた」
私の質問に長男が可愛い声で答えます。
「おじいちゃん、何してたあ?」
と、続けて訊くと、長男は相変わらず無邪気な、
「おばあちゃんおんぶしてたあ!」
その答えに私は一瞬言葉を失いました。が、
「へ、へぇ~、おじいちゃん、おばあちゃんおんぶしてたのかぁ」
と、辛うじて言いました。本当にあんな、
私がそっと隣の妻を見ると、妻も無言で私を見返していました。
おじいさんは、何故おばあさんをおぶっていたのでしょう?
そんな風に思ったりもしましたが、今となってはもう、
次男の話
これはごく最近の話です。ある休日の日中、
私と妻はそれぞれ仕事、
中学生の次男は、
スマートフォンの無料通話アプリを使って会話をしながら、
1つのプレイが終わり、
「よし、こいつにしよう」
ようやく1つのキャラクターに決め、それを選択した瞬間、
「へえ…」
と、女の声が聞こえました。
狭い部屋の中には隠れるような場所もありません。
気のせいか、そう思い顔をスマホに戻すと、
「お母さんいるの?」
と聞いてきました。
「え?いないよ」
と答えると、今度は
「あれ?お前妹いたっけ?」
と訊かれました。
「いないよ!ってか今家に俺1人だし!」」
そう答えると電話口の友人は不思議そうな声で、
「じゃあさっきから後ろで喋ってる女の人、誰?」
と言うのだそうです。次男はあまりの怖さに、
「やめろよお前、恐ええだろうが!」
と、言い返しました。怖すぎて、思わず笑ってしまったそうです。
この他にも、次男の部屋ではしょっちゅう、
本の落ちる、「バサッ」と言う音があまりにも大きいため、
そんな時、眠たい目で時計を見ると、
その後は特に変わったことも起きないし、
「やめてほしいんだよね」と、
色々な本が落ちますが、子供の頃に私が古本屋で買ってあげた、「
横長の形をしたこの絵本を次男は、
妻の話
結果から言うと、今から書くこの話には、
ですが、個人的には一番恐いと思っている、そんな話です。
私の妻は宮城県仙台市の生まれで、地元の高校を出るとすぐ、
先に宮城を出ていた姉を頼り生活を始めたのは神奈川県で、
学校へ通う傍ら、都内でバイトをし、
ある日、いつも以上にバイトがハードで、
幸い乗った電車はガラガラの状態だったので、
疲れきっていたため、腰かけるなり、
いつしか電車は、いつも自分が降りる駅に到着していましたが、
その時不意に腕を強く掴まれ、大きく揺さぶられると同時に、
「着いたよ!!」
と、大声で言われました。
体を揺さぶられる振動とその大きな声に一気に覚醒した妻は、
慌てて立ち上がり、
よかった、乗り過ごすところだった。
(あれ?今起こしてくれたのは誰だろう?)
と言う疑問を覚え、急いで後ろを振り向きました。
たった今自分が飛び降りた電車がゆっくりと動き出しています。
明るい車内には、サラリーマン風の中年男性が1人…。
まったく、知らない人でした。
恐らくこの男性に悪気などは一切なく、強い勇気を持って、
しかしまだ20歳を過ぎたばかりで、独身だった当時の妻は、
多分妻とこの男性は、
妻はまったく記憶にないようですが、相手はずっと、
その話を聞いて私は、
(結局、人間が一番恐いってやつかな?)
とうすら寒く思ったのを覚えています。