行き過ぎた取材

いきなり向かいに座った老紳士は、私を見て優しく微笑んだ。
私は、とあるオカルト雑誌のフリーライターをしている。

最初、私は、スロースリップという大地震前の予兆かもしれないと言われている現象を調べていた。
そしてここシアトルでは、数年前に周期的だったというスロースリップの周期が崩れたとかで、追加取材に来ていて別の事に気が付いた。

シアトル周辺、カナダ国境付近での謎の生物キャディの目撃多発情報。
ロズウェル事件以前に起きたこのすぐ近くにあるモーリー島でのUFO事件。
そしてその事件で採取された金属片を積んでエドワーズ空軍基地に向かったB52の墜落事故現場とその島に現れた、かのケネス・アーノルド。

私は、UMAであるキャディやモーリー島UFO事件・そして今回のスロースリップに関連性があればウケる記事が出来るかもと面白半分で首を突っ込み、ケネス・アーノルドの足跡を辿っていた。そしてその事に気が付いたのだった。

ケネス・アーノルドがUFOを目撃したというカスケード山脈にあるセントヘレンズ山に行った時、地元のとある住民から、以前の山の大噴火で落ちていたという金属片を見せられた。

それには、謎の文字が綴られていた。

もしかしたら、この近辺にはUFOの基地があるのではと思った私は、その謎の文字の写真を撮り、専門家に見せてみたが、古代のペトログリフに似ているという事しか分からず、興味本位で宗教学のマニアにそれを見せる事にした。

そのマニアは、多くの文献を探りながら、今は、分からないから一週間待ってくれと言った。

私は、その3日後に彼が死んだと知らされた。
しかし、彼から私の泊っているシアトルのホテルに手紙が来ていた。
その手紙では、もう手を引くという事と君も手を引けという勧め。
そして写真の文字の意味が書いてあった。
写真の文字はこう書かれていた。

『謎を解きし時、その者の魂は悪魔に捧げられる』

と…… 目の前の老紳士が微笑んだまま、静かに言った。

「君は、気が付いてはいけない事に気が付いた。たしかにキャディもUFOも関係はある。しかしこれらは、君たち人間が考えている様な者たちが起こしているのではない。そう、我々だよ。地底にある地獄へようこそ」

老紳士の目は、全体が黒く変色し、口元に牙が現れた……

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