私の夫が体験した話です。
夫は扁桃腺が腫れやすい体質です。
ある年の冬に、扁桃腺の炎症をひどくこじらせてしまい、
本人は風邪で入院するなんて、と不本意だったようですが、
地元の総合病院の大部屋に入りました。
総合病院、とはいっても、外壁はくすみ、
同室の方々は、
ただ、夫のベッドの並び、壁に背を向けて左隣の方だけは把握していました。
あまり状態が良くなさそうな、とても痩せたおじいさんでした。
私が見舞いに行く時、その方は眠っているか、
腫れが引いて、
その時は、カーテンがピッタリと閉じていたので、
夫はその時は点滴を受けていた為、
談話室で夫が言うことには、昨夜、定番すぎますが午前2時ごろ、
衣擦れの音か、空気の動きなのか、
こんな夜中に身内の人も大変だな、と夫は思いました。
おじいさんは、もうこの二、三日、
その、身内らしき人は、そぉっとそぉっと、
これまた、そーっと、カリッ…カリッ…っと、
イヤイヤお疲れ様です、
面会時間は勿論とっくに終わっていますし、
それに、その病室では、
おじいさん、コッソリそんな消化の悪そうなものを食べて大丈夫?
とも考えたそうですが、それも、不可能なはずです。
おじいさんはベッドから出歩けない程弱っており、
身の回りを慌ただしく世話をして帰っていく身内の人以外、
相変わらず、隣の人の気配は、
ポリッ…カリッ…
それに、おじいさんはカーテン越しに寝息を立てているのです。
嫌な感じはしないんだけどさ、やっぱり怖いからさー、
と、夫は言っていました。
次の日起きてみたら、おじいさんのベッドは片付けられていた、
バタバタ看護師さんが駆けつけてきて…などは一切なく、
その2日後、
おじいさんがどうなったのかは分からずじまいで
夫は、すごく音を立てないように気を使っていたのは、
私は、それお迎えってやつなんでは…と思いましたが、
夫は、
得体の知れない怖さを感じているらしく、
あまりこのことについて、話したがりません。