死亡事故現場

 私が小学生の時、叔母から聞いた話です。

 当時、叔母と私の祖父母はラグビーにハマっていて、よく夜中の2時3時頃に家を出ては 県外でやってる試合を見に行ったりしていました。

 ある日、いつもの様に夜中、祖父の車で試合を見に行く途中、運転していた祖父が「ちょっと早く出過ぎちゃったから、ドライブしながら行くか」と言い出し、少し遠回りをして行くことになったそうです。
 叔母と祖母は「暗いしよく知らない街だから、やめよう」と止めたらしいのですが、祖父は一回言い出したらなかなか聞かない性格で、街中をしばらくドライブすることになりました。

 真夜中で外は真っ暗。
 街灯が10メートルおきに1本立ってるか立ってないかくらいの寂しい田舎道で、人通りは無く車も全然通っていません。
 そんな中しばらく車を走らせ、交差点に差し掛かった時、ものすごい衝突音と共に祖父が急ブレーキをかけました。
 後部座席に乗ってケータイをいじっていた叔母はびっくりし、「どうしたの!?」と聞くと、祖父が「ひ、人を轢いてしまった……」と言いました。
 驚いた叔母は直ぐに車から降り前を確認しましたが、誰もいませんでした。
 車のバンパーにもぶつかった痕跡はなく、血痕なども見当たりませんでしたが、確かに何かにぶつかった音はしていたので、警察を呼ぶことになりました。

 そして10分くらいして、パトカーが 到着し中から警官が2人 降りてきました。
 が、人を轢いたかもしれないと通報をしたにも関わらず、警官達は特に焦る様子もなく、ゆっくりとこちらに歩いてきて、祖父はすぐに状況を説明し始めました。
「た、確かに人にぶつかったんです……! この位の背丈の男の子と、そのお母さんみたいな人で、子供は 半袖に半ズボンで……お母さんも半袖のシャツを着て……」
 と、そこまで言ったところで 祖父はハッとしたそうです。
 なぜなら、その日は1月の下旬頃。
 しかも1番冷え込む夜中に半袖半ズボンなんて、 どう考えてもおかしいからです。
 叔母もそれを聞いた時、背筋が凍ったと言っていました。
 しかしやっぱり真冬にその格好はありえないので、見間違えではないかと叔母は半信半疑でしたが、助手席に乗っていた祖母が「自分も確かに見た」と言い出したのでいよいよ怖くなり「もしや幽霊……? いやいや、まさか……」なんて思い始めた頃、警官のうちの一人が 交差点の一角を指さしました。

 そこには看板が立っており、8月の下旬、ちょうど4ヶ月ほど前の日にちと共に 「死亡事故現場」 と書いてあったそうです。

 あとから警官に話を聞いたところ、あの交差点で親子のひき逃げ事故があり、それ以来、あの交差点で夜中に「人を轢いてしまった」という通報が絶えないのだとか。

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