近所のおじさん

小さいころから、近所に顔の腫れあがったおじさんがいました。
その人の顔は腫瘍が3つくらいついていて、
元の顔立ちがわからない様相をしていました。

一軒家で一人暮らしをしているようで、いつも自宅のガレージみたいなスペースで、
木材を積んだりしていました。
具体的にどんな仕事をしていたかは知りません。
年齢も不詳。
名前も聞いたことがありませんでした。

正直、かなり不気味な顔をしていたので、なんだか触れてはいけない話題のようで、
特に友達や家族とその人について話すようなことはありませんでした。

月日が経ち、私は上京して10年が経っていました。
久しぶりに実家に帰ったところ、ふと、そのおじさんがいなくなってることに気が付きました。 生まれて初めて、母親にそのおじさんのことを聞いてみたところ、
「そういえばそんな人いたわね」 と、それだけを言われました。

どうやらそのおじさんについての情報を全く持っていないようでした。
近くに住んでる幼馴染にもそのおじさんについて聞いてみました。
すると、
「あの人、大塚さんていうらしいよ。5,6年前に引っ越したって聞いたけど」
初めて名前を知りました。
大塚さん。しかし、幼馴染もそれ以上のことは知らないようでした。

私も仕事がありましたので、それ以上聞き回るのはやめにしました。
さらに月日が経ち、4年後、地元でやっていたフットサルチームの忘年会に行きました。
そこで、大塚さんについて更なる情報を知りました。
以前聞いた幼馴染とは別の友達が、
そういえば2丁目に顔にコブがたくさんついたおじさんいたじゃん?あの人最近死んだらしいよ」
私はびっくりして、4年前のことを思い出し、思わず聞いてしまいました。
「え!?ど…どこで亡くなったの?」
「いや、あの家だよ。2丁目の…たぶんおじさんの自宅じゃない?
4年前の幼馴染に聞いた情報と食い違っていて、私は困惑しました。

それどころか、うちの母親もいなくなったと言っていましたし、まさかずっと家の中にいたのでしょうか? と、いうか、どの情報が正しいのか、確かめる術がないので、結局また、それ以上のことはわかりませんでした。

引っ越したのか、あの家で亡くなったのか、わかりません。
それよりも気になったのは、 あんなに近所にずっと住んでいたのに、 誰一人正確な情報を持っていないことです。
大塚さんは、引っ越したのか、亡くなったのか、もしかしたら今もどこかで……

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