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呼び鈴

もう、40年以上前の話なんですが……
自宅介護で寝たきりだった祖父が危篤になり、緊急入院をしました。

言葉が不自由でしたが、中学生の私が遊びにいくと、ニコニコと笑顔で見つめてくれて、それだけで嬉しかった記憶があります。
私が帰る時は、必ず握手をするのですが、寝たきりとは思えないほど力強く握ってくる、大きくて、暖かい手は、今もしっかりと記憶に残っています。

危篤入院した夜、私は夢を見ました。
玄関の掃除をしていると、道の向こうから、
自転車を片手で運転しながら近寄って来る男の人が来ました。

その男の人は私に
「あんたのおじいさんの家に行ったら、留守なもんで聞きにきたんだけど……おじいさんの居場所しってる?」
良く見ると、右手でハンドルを握り、左手には白い瀬戸物をもっています。
私はとっさに「知りません」と言って家の中に入りました。

朝起きると嫌な気分でしたが直ぐに忘れ、学校へ行きました。
そんな夢を見たことも忘れ、その日もバタバタと寝る時間になり布団へ入りました。

そして、また、夢を見ました。
呼び鈴が鳴りました 家には誰も居ないので、私が出るしかありません。
玄関の覗き穴からそーっと見ると、なんと、昨日おじいちゃんの事を聞いてきた男のひとがいました。 昨日と同じく、自転車にまたがり、左手には白い瀬戸物を持っています。
その男の人は、何度も何度も呼び鈴をならします。
仕方なくわたしがドアを少し開けると
「あぁ昨日のお嬢ちゃん、おじいさんの居場所わかった?」と聞いてくるのです。
わたしは「知りません」と言って玄関を閉めました。

朝が来るまでよく眠れず布団に丸まって居ました。
次の日も夢を見ました。

その日からの夢は、私が玄関の除き穴を見る所から始まります。
片手運転しながらヨロヨロと向こうの道からギコギコとこぎながら、玄関まで来ては呼び鈴を鳴らし、「お嬢ちゃん!おじいさんの居場所しらない?」と大きな声で聞いてくるんです。

その次の日も又呼び鈴の音からの夢、
次の日も次の日も、全く同じ夢を見るのです。
あまりにも毎回同じ夢を見るので、怖くて誰にも話せて、は居ませんでした。

7日程たったある日、寝不足で酷い顔のまま、
入院しているおじいちゃんのお見舞いに行きました。

もう寝ているだけでしたが、唇が乾燥して可哀想だと、
濡れたティッシュで軽く拭いてあげてました。
その病室は二階にあり、廊下には学校にあるくらいの窓が付いていて、見下ろすと下は駐車場で、入り口から遠くの大通りまで続いている道が見渡せます。
その時私の心臓が凄く早く、動き出すのがわかりました。

毎晩毎晩見る夢、 自転車を乗ってくる男の人の夢。
私が除き穴から「また来た、やだな怖いな」と、思いながら覗いていていた、向こうの方からヨロヨロと向かってくる、男の人が来るとき時の道が全く今、見ているこの景色だったからです。

私は怖くて怖くて誰にも言えず、家族に先に帰ってると伝え、家に走ってかえりました。 いつもは正面入り口からしか入らなかったから分からなかったけど、車で来るとあの道なんだ!と何故か焦るような追われるような気持ちで、家に帰りました。

その日の夜は、何時もより長く起きて居ました。
出来れば寝たくない気持ちでいましたから……
しかしいつの間にか寝ていました。

夢を見ました。
呼び鈴が鳴ります。 私はそーっと除きます。
除き穴に、大きな眼球が見えギョッとした時、 片手運転していた男の人はニコニコしながら 「お嬢ちゃんありがとう、 おじいさん見つかったから 」といって走り去っていきます。
片手運転ではなくちゃんと両手でハンドルを握り、しっかりとこいでいます。
その景色は、病院からみた細長く大通りまで続いている道でした。

明け方電話が鳴り、おじいちゃんが亡くなった事を知りました。
お葬式が終わり、 おじいちゃんが焼かれ入った骨壺を見て私は全身が震えました。
まさしくあの 男の人が持っていた白い瀬戸物だったから。

それからは全く夢は見なくなりましたが、数十年して誰かに聞いてほしくて書きました。
あの、男の人は死神の使えだったのか……と 。
今では自分が祖母になる年齢になりましたが、この話は死ぬまで忘れ無いとおもいます。

朗読: 朗読やちか
朗読: 怪談朗読と午前二時

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