私は、会社の外の非常階段を上がる男性を見つけました。
以前、このビルから飛び降り自殺をした人がいたので、
男性は、結構早くて、屋上でやっと彼に追いつきました。
「待って」 私が声をかけると、彼は驚いたように私に振り返りました。
私は、彼を通気口の縁に連れて行き、落ち着かせるように、
「まさか飛び降りる気じゃなかったんだよね」
彼はうつむきながらも、そうじゃないと呟きましたので、
私は少し安心しましたが、様子がおかしかったので、
彼は泣くのを我慢するように、奥歯を噛み締めながら、
彼が言うには、
そう、例の飛び降り事件の当事者だったのです。
彼は続けました。
なんでも、その事件以来、
私は、とうとう涙を流し出した彼の肩を優しく抱きしめました。
私もある記憶がよみがえりました。
私は愛する彼に伝えました。
「あなたの気持ちは、良く分かったわ。本当にごめんね。辛い思いをさせちゃったね。じゃあ、私は安心して逝くから、