マフラー

私は寒がりなんだけど、真冬でもマフラーが出来ないんだ。
中学生の冬に体験した事が原因で、未だに出来ない。

冬休みを目前にしたある日、学校近くの公園で自殺したと思われる遺体が見つかり、騒ぎになっていた。
当時の私はオカルトや怪談が大好きで、興味本位で夜にその公園へ忍び込んだ。

その公園には背の高いブランコがあって、その周りに規制線が張られていたので現場はここなんだと思い「心霊写真でも取れないかな?」という軽い気持ちで何枚か携帯で写真を撮った。
すぐに撮った画像を確認したんだけど、何も写ってなくて飽きてきたから帰ろうとした時、背後のブランコから音がした。
「ギィ…ギィ…ギィ…」
風も吹いていないのにブランコが揺れる様な音がしたから、驚いてその場に固まった。
「ギィ…ギィ…ギシィ…」
その時思い出した。
ブランコの乗る部分はチェーンごと撤去されている事に。

これはブランコが揺れる音ではなく、ロープが揺れて軋む音だと。
首吊り自殺した遺体が揺れているイメージが頭に浮かんだ。
怖くなって全速力で逃げ帰った。
帰ってからは布団に包まり朝まで震えていた。

翌朝、友達に昨日の出来事を話しながら自転車で登校していると、
突然マフラーが引っ張られた。
何故か真上にあった木の枝にマフラーが引っ掛かり、
細い枝なのに折れずそのまま自転車から投げ出されて宙吊りになった。
まるで首吊りをしている様に。
すぐ横にはあの公園があった。
あれから怖くてマフラーが出来ない。

朗読: ジャックの怖い話部屋
朗読: 怪談朗読と午前二時

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