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おじぃ

私のおじぃは痴呆症になる前までは毎日のように
ハットに白いシャツ、グレーのズボンに黒い傘を杖代わりにして散歩していました。
少しづつボケ始めると外へ出てはおしっこを漏らし、
フラフラと道の真ん中を歩いては周りを困らせていました。
そんなおじぃを私は探しては連れ帰ったりもしたものです。

親と仲が悪かった私は18歳になると他県へ仕事にでました。

その頃のおじぃはもう家の壁をつたって歩くことが精いっぱい。
目が合うと満面の笑みをうかべながらお辞儀をするおじぃの姿を
は哀しく情けなく、それでも可愛らしいと思う複雑な気持ちで見ていました。

3年たったころ母から「おじぃはもう長くない」と聞いたので心配でしたが、
何かあれば連絡してほしいと言い残し、いつもの生活へと戻りました

それから1か月過ぎたころ、私の夢におじぃが散歩する姿で現れ
あの満面の笑みを見せながら深々とお辞儀をしたので、
声をかけましたが、おじぃは満面の笑みのまま振り返り私から離れていったのです。

姿が消えたところで夢から醒め、顔中涙だらけで
何が何だかわからずしばらく泣いていました。

翌日、気になったので母に電話すると
今日がおじぃの火葬だと言われ、慌てて帰ろうにも実家は沖縄・・・
急いでチケット取ろうとしましたが当日は無く、
結局実家についたのは翌日になりました。
挨拶に来てくれたのに見送れなかった。

おじぃは悲しんでいるだろうか。
おじぃの葬式から数年、再び夢にでてきました。
今度は後ろに二人の子供を連れて、8畳くらいの見たことない部屋で一列になり
くるくると歩いていまいた。最初はこの夢の意味が解りませんでした。

3度目の夢。
おじぃと二人の子供、そしておばぁが一列になって、
あの見たこともない部屋でくるくる回ります。
ただ、おばぁが右足を引きずってどんどん遅れてくる。
おじぃはおばぁの右足を指さしながら私を見てきます。

夢から醒め、不思議に思ったのはおばぁは寝たきりではあるもののまだ生きてます。
念のため母に電話し、おばぁの様子を聞きました。

「おばぁはしきりに『右足が痛い』と言っているけど、
いつものことだし定期的に回診を受けてるので大丈夫」

母はそう言ってましたが、とにかく痛がってるところを再度見てもらうように伝えましたがやはりお医者さんが言うことを信じてしまう。

実家に帰ろうか数日考え、再度様子を聞くために母に連絡したら、おばぁの右足の付け根近くの骨が折れていたので緊急でボルトを入れる手術をしたそうです。
おじぃは、死んでもおばぁの事が気になって教えに来てくれた。
そこで気が付きました。

ふたりの子供・・・
戦争で宮古島に疎開していたときに、ひとりは破傷風。
もう一人は風邪をこじらせて亡くなったと昔おばぁから聞いてました。
二人の子供は私のおじさんおばさんにあたる人なんです。
おじぃは子供たちに会えたことを教えてくれたのです。

数年後、おばぁが危ないと聞いたので帰ってこいと連絡がきました。
翌日親族が集まったらおばぁは息をひきとりました。
まるでみんなが来るのを待っていたように。
葬式で、おばぁが時々私だけに話していたこどもたちのはなしを伝えました

沖縄では、親より先に亡くなると「親不孝」といわれ
亀甲墓には入れないしきたりが一部あります。
おじぃの子供二人も亀甲墓の横にコンクリートのブロックで作られ
簡単な四角に囲われたところに入れられてました。
それはもうお墓と呼べるものではないものです。

「私が死んだら子供たちと一緒にお墓に入りたい」
しきたりで本家の墓に入れなのであれば、私も子供のところに入れてほしい」

あの小さなお墓でもないところに入るというのです。
私にはおばぁの話をつたえることしかできませんでした。
父には亡くなった二人も入れると6人兄妹です。
父含めた生きてる兄妹4人で新しくお墓を立てたそうです。
新しいお墓にお参りをした翌日、おじぃ・子供二人・おばぁの4人で横一列になり、お辞儀をして消えて行く。
おばぁが最後に軽く手を振ってくれたので、私もつられて手をふりました。
それが最後、もうおじぃおばぁは私の夢には出てきません。

生前、会話の少ない夫婦。
朝はおじぃの好きなコーヒーを淹れ、夜は島酒を用意しては愚痴ってるおばぁ。
涼しい時間に好きなたばこを吹かしながら散歩し、夜は酒を飲んでは楽しそうに酔っぱらうおじぃ、ケンカもよくしてました。
それでもふたりは二人の人生を生き抜き 死んでも二人は一緒なんです。
おばぁはまた愚痴ってるのでしょうか?
おじぃは好きな散歩を子供たちとしているでしょうか?

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