これは小学校の時の話。
私の小学校は開校10年ほどの比較的新しい学校でした。
そんなことも関係してか、よくある学校の怖い話というものがありませんでした。

それをつまらなく思った私と友人数人は自作の学校七不思議を作って、広めようということにしました。
その内容はまあ小学生らしく、渡り廊下に出る幽霊だとか
音楽室で勝手にピアノが鳴るだとかありがちなものでした。
そして七不思議の最後、7個目は他6つの不思議をすべて体験すると
良くないことが起きる、というものでした。
いざ七不思議を話してみると、皆怖い話に飢えていたのか
噂は瞬く間に広がっていきました。

噂が広がるにつれ七不思議の内容に尾ひれがついてきました。
といっても話の根幹は変わらず演出が大げさになったものがほとんどなのですが、その中でも1つ明らかに内容が変わったものがありました。

七不思議の最後、7個目の話です。
この変わった内容というのは夜中3時に校舎の中に羊が現れて
見た人に悪いことが起きる、というものでした。
この話だけあまりにも突拍子も無く内容が変化していたので私たちは不審に思いました。

それから数ヶ月後、一緒に七不思議を考えた友人のひとりが大怪我をして
私は病院にお見舞いに行きました。
幸い命に別状は無かったのですが友人は見舞いに来た私を見るなり言うのです。

「俺、見たんだ。怪我をする前の日の夜、学校で羊を見た!
夢の話ではあるんだけどさ、気づいたら夜の学校の中にいたんだよ。
シーンとした学校の中を歩いてくんだけど図書館に入ったところで
上の方からからなんか気配がしたんだよ。」

ちなみに私の小学校の図書館は吹き抜けになっていて、
頭上には2階の渡り廊下が橋のようにかかっている。

「それで、渡り廊下をふっと見上げたらでかい羊がこっち見てんだよ!
俺そいつと目ぇあっちゃってさ、そいつが俺の顔を見てにやぁっと笑ったんだよ!
ほんとこう、人間みたいに!
んでそいつが階段の方にゆっくり歩いてくのが見えてさ、
まずいこっち来る、と思って急いで玄関に猛ダッシュしたんだよ。
途中階段の方から狂ったような笑い声が聞こえてきてさ、もう無我夢中で走ったんだ。
いざ玄関につくと鍵が開かなくてさ、気づいた時には奥の廊下から
ゆったり羊が歩いてきてるんだよ。
だれ?私、君、あなた、え?だれ?きみ、まって?ちょっと、ダメだよ、きみ、え?
っていう風に20歳くらいの高めの男の声で訳わかんないこと言いながら
体を左右に揺らして四つん這いの羊が。
もう怖くて必死で玄関ガチャガチャやってたらギリギリのとこで鍵が開いて
そこで目が覚めた。時計見たら夜中の3時だったんだ。
多分俺、あれに捕まってたら大怪我じゃ済んでないと思う。」

にわかに信じ難い話でしたが、私が小学校を卒業するまでに怪我や事故にあった友人の何人かは口を揃えて同じ内容のをしました。
ゆっくりと変な間で区切った意味の無い言葉を言いながらでかい羊が追いかけてくる。
見つかるのは決まって図書館。

夢から覚めると夜中の3時だった。
これは全員に共通した内容です。
小学校を卒業してからはぴったりとそんな話は聞かなくなりました
あれは一体なんだったんでしょうか。
私の友人は皆それから逃げきれていましたがもし捕まっていたらどうなっていたのか、
そもそも羊の噂はどこから広まったのか、今となってはわからないことです。

朗読: りっきぃの夜話

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