塾の先生の話(またの名を、誰も知らない旅行記)

これは、僕が中学生の時に塾の先生から聞いた話です。

今となっては話の内容があやふやですが、、、笑
もう六年前になるので、許してください。

先生は当時、深夜に仕事のあるバイトをしていたそうです。
そのバイト先に、毎日原付に乗ってくる友人(Aさんとします)がいました。
Aさんは至って普通の人で、真面目で、バイトにももちろんサボらずに来る人だったそうです。

ある日のこと。
先生は、バイト先の近くのスーパーに夜食を買いに出かけました。
そのスーパーの駐輪場に、Aさんの原付を見つけた先生。
影で待ち伏せをして驚かしてやろうと入口付近でAさんを待っていました。

ところが、いつまで経ってもAさんは出てきません。
先生はしばらく待ちましたが、結局バイトの時間になり、
バイト先へ向かうことにしました。

しかし、その日は仕事のあるAさんはなかなかバイト先に来ません。
先生もソワソワしながらその日はそのまま仕事を終え帰宅しました

次のバイトの日。
先生がバイト先に行くと、ぐったりしたAさんが休憩室のソファで寝ていました。
その日はAさん失踪から3日くらい後で、誰にも連絡していなかったそうで、
バイト仲間も不安がっていたようです。
Aさん本人に聞いても「何も知らない。気づいたらここにいた。」ということしかいいません。
不思議に思った先生ですが、この時は手がかりもないため解散、となりました。

また別の日。
Aさんが原付に乗ってスーパーの方にフラフラと向かう様子を見た先生は、
Aさんを追ってスーパーの方に向かうことにしました。
案の定、先生がスーパーに着くと、
Aさんはその駐輪場で原付からおりてヘルメットを外すところでした。

なんとなく、先生は話しかけず影から見守っていました。
Aさんは外したヘルメットを抱え、座席部分をカパッとあけ、
収納スペースにヘルメットをしまいます。

そして歩き出しながら座席を戻すのです。

バタン。
その”バタン”の瞬間でした。
Aさんはくるりと方向を変え、スーパーと逆向きに歩き始めたのです。
その顔はいつものAさんとは違い、目を開けたまま眠っているようだったといいます。

あわててAさんを止める先生。
「おい、どうした!!」 肩を揺さぶると、ハッと目を覚ましたAさん。
その行動には覚えはないようでした。

その後、今までの事をふまえて2人で話し合った結果、以下のような結論が出たそうです。

・Aさんが謎の旅行に出かけるのは寝不足の日
・Aさんは原付の座席を元に戻す音で意識がなくなる
・謎の旅行の間のことを、Aさんは何も覚えていない

それ以降はAさんの行動に注意し、
原付に乗る時はミントのガムを噛むようにしたそうです。

しかし、これでは終わりません。
先生のバイトは、ある時期に酷く忙しくなったそうです。
先生もAさんも夜の間ずっとてんてこ舞いでした。
休憩したいのは山々だった先生ですが、真面目で休憩もしないAさんを残して寝ると、
次はどうなるかわかりません。
故に休む訳にはいきませんでした。

ある日、先生は耐えきれなくなり休憩室で仕事を投げ出し、
Aさんを見守りながら休むことにしたそうです。
されど、先生はそこまで真面目でもなく、夜に強くもない。
次第にうつらうつらし始め、やがて寝てしまいました。

次に起きたのは翌日の朝。
先生は意識がもどるや否や跳ね起き、Aさんを探します。
ですが、いくら探せどAさんはどこにもいません。

「やっちまった!」

これでAさんの原付がどこかにあり、さらに座席が閉じてヘルメットが入っていたら、
これは間違いなく例のアレです。

眠い目を擦り擦り、仕事場の駐輪場に原付がないことを確認。
そのまま先生はスーパーに向かいます。

ミントガムの力を信じてスーパーへと歩みを進める先生。
ただの買い物であってくれと願います。
しかし、その期待は当然のように裏切られたのです。

現場にはヘルメット入り座席の閉じた原付、
そして散乱したミントガムが残されていました。

溜息をつき、バイト先に戻った先生。
とりあえず上司にAの旅行癖(?)と現状を報告します。
携帯は置きっぱなしでしたが財布は持っていったようなので、
とりあえず4~5日待ってみることにしました。

ですが、1週間経ってもAさんは帰ってきません。
先生は慌て始めます。そしてやはり自責の念に駆られます。

あぁ、俺は何故寝てしまったのだ!」と。
上司や仲間もソワソワし、色々な噂が飛び交います。
「どっかで轢かれたんじゃないか?」
腹減ってぶったおれてるかも」
その一つ一つが先生の不安を増幅させるのでした。

ところが、その不安も唐突に終わりを迎えます。
Aさんは失踪から8日後(つまり噂が飛び交った翌日)、
ヒゲを伸ばし、ふらりふらりと帰ってきたのです。
「A!すまん!」
「あぁ、何とか大丈夫だったわ、うん」
意外と余力のあるAさんの返答を聞き安心した先生。
心配は萎み薄れ、代わりにその旅行への興味が湧きはじめました。

「それで、Aよ、お前今回はなんか覚えてんのか?」
「あぁ、今回は記憶が無いのは片道だったよ」
「おぉ、どっかで目が覚めたのか。それで?」
「なんかフワッと香ったんだよ。で、目を開けたんだ」
「ズバリそこは?」
「北海道のラベンダー畑。ど真ん中。ヒゲの汚らしい男が。」

寝不足テンションも相まって、2人はしばらく笑い転げたそうです。
その後先生がそのバイトを辞めるまで、Aさんは謎の旅行には出かけなかったようです。

今思えば夢遊病とかそういう話なのかも知れません。
ですが、僕も先生も九州に住んでいます。
何をどうしたら北海道に着くのでしょう。今も不思議でなりません。

スマホで全部一気に打ちました。
ろくに確認もしてないので色々おかしいかもしれません。
でも許してくださいね笑

最後まで読んでくださった方、本当にありがとうございます。

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