おじいちゃん

もう10年前の話。
その頃の私は、接客業の仕事が忙しく疲れからよく金縛りにあっていた。
私は今はそういった話や朗読など好きで聞けますが、その頃は怖い話も苦手で全く怖い話や心霊スポットに行くなど、絶対していなかった。

しかし、金縛りのみで幽霊など出た事も無く、気にはならなかった。

ある日、金縛りにもなっていない状態でベッドから少し落ちそうになっている私は、うっすらと起きそうになりながらも日々の疲れから、中々目覚めたくなくて、落ちそうだなぁと思いながらも二度寝に入りそうになっていた。

すると、落ちそうな私を誰かが支えてくれている感じがして、寝ぼけた頭で
『暖かい手だなぁ。あ、この感じは小学生の時に亡くなったおじいちゃんだ。嬉しいな…』
と思いながら、少しの二度寝してからフワッと幸せな気分で起きた。
おじいちゃんに幸せや嬉しいという思いがあったのは、私は3人姉妹の長女で、妹2人は可愛がられていたけど、私には目が合わないほど、全く相手にされていなかったからだ。

おじいちゃんも私のこと気にかけてくれたんだなぁと思い、起きてから嬉しくて、朝の支度を始めた。

でもそんな思いも一瞬で消えた。

なぜか、ふと思い出して寒気に襲われた。
あのおじいちゃんの手の暖かさが、急にひどく冷たい、白く細い女の手だと気付いてしまった。
爪も伸びきっていて、凄くリアルでした。

血の気が引くというのは、こういう事なのか…と、人生で初めて感じた瞬間だった。

人からはあまり怖くない体験だと思いますが、私にはおじいちゃんへの思いを一気に冷めさせられた感情と、すぐに分かった冷たい女の手のギャップに頭が混乱していました。

その後、1度だけ金縛りにあい、階段下から髪のボサボサの白い服の女が上を見上げて、階段を上って私の方に向かってくるのを感じ、あの時の女だ‼︎とすぐ分かり、初めての経験にヒヤヒヤした気持ちもありましたが、騙された怒りの方が強く、消えろ!と何度も心の中で繰り返しているうちに、階段の途中でだんだん薄くなりながら消えていったので、何となく安心して眠りに落ちました。

未だになぜ私の所に現れたのか、なぜおじいちゃんの感覚になっていたのか、全く意味が分かりません。

朗読: 繭狐の怖い話部屋

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