これは、私が実際に体験したお話です。
私の両親は小学生の頃に離婚しており、私は母に育てられました。
私には3つ下の弟もいて、二人とも母と一緒に暮らしていました。
高校生を卒業するぐらいから、離婚した父とは年に何度か会ったりもしていました。
そんな父がある日末期癌であると知らされ、私は父の看病をする事を決めて9ヶ月間の闘病生活が始まりました。
そんな生活をしている時に起こった話です。
同棲中の彼氏や、母親、母親の彼氏みんなで父を支えていました。
闘病してから、4〜5ヶ月たった頃に父はホスピスで過ごす事になり、私は毎日ホスピスに通っていました。
私は元々、霊感はある方なのでよく連れて帰っていたみたいです。
母も霊感が強く、ひどい時は20人程憑いてるよって言われる事もありました。
私は特に見えたりとかはしないので、母親に言われて「ふーん、そうなんだ。やけに肩こると思った」なんて思ってました。
いつも母が祓ってくれていました。
そんなある日、いつも通りホスピスから帰る時に入口の自動ドアを出ようとすると人影が見えた気がしました。
外はもう暗かったので自動ドアのガラスに写るその人は私の背後にいるようでした。
病院のパジャマを着た男性のようでした。俯きながらでも、私の方を見ているのがわかりました。
振り返らずに、気にしないように病院を後にしました。
そのまま、帰りは何も起きず無事に帰宅し、彼にその話をしました。
彼は「気にしたらアカンで? すぐ憑かれるんやから」と言い、そのまま先に寝てしまいました。
私も寝ようと彼に背を向けた状態で目を閉じていたら、後ろから抱きつかれました。
普通に彼だと思っていたのですが、なんか変なんです。
声は彼の声なんですが「〇〇? 〇〇ちゃーん。〇ちゃん」と色んな呼び方で私の名前を呼びます。
それもどんどん声が低く籠もったような声になり、その時に気付いたんです。
金縛りにあっていると。
そして背後から腰に回していた手はいつしか私の頭をぎゅーっと締め付けてきます。
声も出ないし、動けないし、なんせ怖いって思っていると突然、金縛りが解けました。
慌てて彼の方を向き、寝ている彼にしがみつき、頭から布団を被りました。
「もう終わったのかな?」と思っていると、やけに家の中が騒がしいのです。
そこら中を走り回る足音、たくさんの人の声……。布団から出たらダメだ! って思っていたら、また金縛り。
すると誰かが私の被っている布団を頭からずらそうとします。
「やめて! やめて! 助けて!」
声に出して言ってるつもりが、彼は全く起きてくれません。
とうとう頭が布団から出そうな時に、彼が「どうしたん!?」って起きてくれました。
その瞬間、私は号泣しました。本当に怖かったんです。
夜中の3時頃でした。
しばらく一緒に起きてくれて、一連の話を聞いてもらい、その日は部屋の電気をつけたまま寝ました。
あまりに怖かったので、翌日すぐに母に電話して話をしました。
話終えると母は「それ、相当強い霊やなー。あんたがその話をしてる間かけてるフライパンがずっと揺れてた」と言われました。
それからしばらくは、何も無く過ごしていました。父の看病しながら、ホスピス通いも続きました。
あの夜の出来事も、忘れかけたある日、母が家に泊まることになりました。
お酒も入り、少々酔っ払ってリビングで寝てしまっていました。
私が片付けとかをしていると、突然「〇〇! こっちに来なさい! あいつが来た!」とすごい勢いで怒鳴ってきました。
私は「あいつって?もしかしてこないだの……」と思い、すぐに母に駆け寄りました。
母は「この子から離れなさい! あなたに何もしてあげれないから!」と見えない相手に叫んでます。
私を抱きしめながら。私も母にしがみついてました。
そして、いなくなったのか母は私を離し、どうしてそんなに私に固執するのかを説明してくれました。
どうやら、その男性は父と同じ癌で亡くなった方のようで、男性には娘がいたそうです。
その娘がまさかの私と同じ名前。漢字は違うのですが……。
その男性は娘から、看病してもらえなかったと。だから、父に付きっきりで看病している私に何かして貰えると思っていたようです。
気づいてもらうためのイタズラだったみたいです。
でも、これで離れてくれたのかな、と思うとホッとしました。
数週間後、弟が実家に帰ってきた時にこの話になり、一連の話をしていました。
私が「フライパンが風ない所で揺れたらしいで!」って話をすると、弟が「あー、あんな風に?」ってキッチンの方を指差すとフライパンが1つ勝手に揺れていました。
見た瞬間、鳥肌と「ひーーぃっ!」ってなんとも声にならない悲鳴を上げていました。
そんな事があってから、我が家ではその話をする事を禁止しています。