見上げる男の子

 昔の彼女から聞いた話。

 花火大会の会場となっている海水浴場で、友達数人とコンビニで買った缶ビールとつまみを片手に呑み会をしていた。
 5日ほど前に花火大会があったため、海水浴場とは思えないほどゴミが散乱していたそうだ。
 その場で知り合った別グループと合流し、どんちゃん騒ぎをしていたらしい。
 当時、高校生だった彼女はノリもよく社交的で騒いでいる姿が楽しそうだったことから、20代の男女混合のグループに声をかけられたそうだ。
 波打ち際の砂浜に座っていたそうなのだが、気づかないうちに隣に4歳くらいの、青のTシャツに海パンを履いた男の子が座っていたそうだ。
「ポッキー食べる?」などと話しかけるが、体操座りで夜空を見上げるだけで返事は返ってこなかった。
 そして、ふと目線を他にやり、もう一度男の子の方を見ると、そこにはもう男の子の姿はなかったそうだ 。
 友達と一緒に男の子を探すが見当たらない。合流し一緒に騒いでいた別グループの人の子供だと思い、訪ねるがそのグループの人達は子連れでは来ていないという。
 怖い、怖いとその場は盛り上がり笑い話で終わったそうだ。

 翌日、アルバイト先の飲食店で昨日あった不思議な話をする。
 その話を聞いたオーナーが青ざめた顔で男の子の特徴を聞いてくるので、繊細な情報を伝えると、自宅に併設された店内から、自宅のほうに入って行ったそうだ。

 しばらくし、新聞を持ち戻るオーナー。日付は4日前の物だった。
 記事にはこう記されていた。
〈○○花火大会の3時間前の事故。4歳の男の子水死〉
 その記事を見て顔面蒼白になっているとオーナーが言う。

「花火見たくてずっと空見上げてたのかもね」

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