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真夜中の子供

私が学生時代に体験した話です。

当時夜間の工事現場の警備員のバイトをしていた私は、冬の初めのその日は実際の工事現場から少し離れた場所に配置され、「この先右折できません」という看板の横で立っていました。

その場所は大きな建物と建物の敷地に挟まれた路地で、私の後ろは曲がり角のない一本道、突き当たりが丁字路でした。
工事現場は突き当たりを右に曲がったところにあり、そちらには曲がれないと言う状況で、見渡す限りひとりぼっちの寂しい状態でした。
東京の本当に都心で夜は全く人の往来はなく、一人ぽつんと退屈しながら寒さ堪えて立っていました。

夜の0時を過ぎたくらいに前方から一台のタクシーがやって来て、看板の手前で止まりました。
タクシーの運転手の中にはストレス発散なのかやたらとクレームしてくる質の悪い人が良くいるので、また何か言われるのかとうんざりしつつ近づいて、 「どうかされましたか?」と声を掛けました。

すると 「そこの子供、邪魔だろ、どかせよ!」と言います。
子供?と思って 「は?どこですか?」と返すと 「あっ?いねぇなぁ?もういいよ!」と言って走り去りました。
タクシーの後ろ姿を眺めつつ、何を言われたのかと考え、周りを見回しますが、見通しの良い一本道で、自分しかいません。

釈然としないまま、仕事を続けた私は、その夜、同じ事を5台の車から言われました。
私には見えないが子供が居る? とはいえ、持ち場を離れるわけにもいかないので、余計なことは考えないようにして、朝まで勤めあげました。

一週間後、全く別の現場で工事が早く終わってしまって、始発電車をバイト仲間と缶コーヒー片手に待っていたとき、バイト仲間が唐突に 「あのさぁ、三番町の現場行った?」 ときいてきました。
行ったと応えると 「俺、変なものを見たんだよ」 と言って話始めました。

彼があの現場に入ったときは、工事現場はさらに先に進んでいた様で私が立っていた場所には会社の車が停めてあり、交替でとる休憩をその車の中でとっていたそうです。
彼は運転席に座り、エンジンを掛けてヒーターをつけ、ふとフロントガラス上部のミラーを見たそうです。

そこには白いワンピースを着て大きなボールを抱えた女の子が、車の方を見ているのが映って居たそうです。
一瞬、子供が?と思って振り向いた彼は、ずっと先まで誰もいない道路が見えて…。
再度ミラーを見直すとやっぱり子供が映ってて…。
「それで、どうしたの?」と尋ねた私に彼は
「疲れがたまってんだなと思って仮眠した」とのこと。
「あれは何だったんだろう?」
と言う彼に私は自分の体験は言わずに置きました。

お互いに訳のわからない不思議な体験だつたのと、もう考えたくなかったので。
やはりあのとき私の近くには、子供が遊んでたんでしょうか?
見えてたら、あの夜は朝までひとりでそこに立ってはいられなかっただろうけど…。

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