不謹慎な先輩

解体屋をしていた先輩の話。
解体屋の仕事をしている先輩いわく、ちゃんとした依頼者のいる解体作業もあれば、夜逃げなどが原因で所有者無しのまま数年、数十年が経ち、自治体からの依頼で解体作業を執り行うこともあるそうだ。

心霊スポットとして有名な空き家を取り壊すこともあり、
そうゆう時には決まってお祓いをしたのち、各自にお守りを渡されるそうだ。

県内の有名心霊スポットだった○○の家。という、県内有数の心霊スポットの解体にも参加したそうだ。
昔から、幽霊の存在を信じない先輩は心霊スポットで不謹慎な行動をとることもたびたびあり、周りからは苦言を呈されていた。

そんな先輩が仕事で訪れた古民家での出来事。

数年前に、ご主人が亡くなり、奥さんは施設に入り、息子夫婦は別世帯で暮らし、空き家を解体し更地にし土地を売りに出す予定の家だったそうだ。
そこで、不用品をゴミとして処分するそうなのだが、不用品として仕分けされた物の中に先輩の目に止まったものがあった。
旧日本軍のサーベル。
手入れをされていないためかサビサビで刃こぼれの酷いサーベルだったが、気に入った先輩がそれを持ち帰ったそうだ。

サーベルを部屋に飾り、ことあるごとに人に、自慢してまわる先輩。
そんな先輩がおかしくなったのはこの頃からである。
ガタイのよかった先輩はみるみる痩せていき、顔色も良くない。
今だから笑い話にできるがあの頃、先輩には明らかに死相がでていた。

サーベルを持ち帰り2ヶ月。
すっかりやつれた先輩は会社を休みがちになっていた。
心配し家に見舞いに行くと、やつれきった先輩にかける言葉もなかった。
ブツブツ…ブツブツ…
目の焦点は合わず独り言を言う先輩。
口からはよだれが垂れているが本人は気づいていない。
「黒豚…白豚も食った。白豚はうまい」
ブツブツ訳の分からない事をつぶやく先輩。
「見ろー、うまそうやろー。もう少し…もう少し…」
先輩は一人暮らしでフレンチブルドッグを飼っていたのだが、
その愛犬を掴まえてそんな気味の悪い事を言った。

その当時の先輩が言うととても冗談には聞こえなかった。
これはいよいよヤバいと感じ、友人やほかの先輩と相談をした結果、
霊媒師に相談することになった。
原因は火を見るより明らかで、あの旧日本軍のサーベルにあった。
霊媒師いわく取り憑かれたのではなく、強く残る残留思念に影響をうけたのだそうだ。
お祓いをし、サーベルを然るべき方法で処分してもらい、
先輩は1週間とかからず体調を元に戻した。

あとから知った事だが、黒豚=黒人。白豚=白人。
戦時中、仕方なく食人を強いられた日本兵たちの隠語だそうだ。
お祓いを済ませすっかり元気になった先輩はその当時のことをあまり覚えていない。
そして、あいも変わらず、自殺のあったトイレの個室でわざわざ大便をしたり、不謹慎極まりない行動を続けている。
ある意味、人怖な話。

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