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悲しい気持ち

昔付き合っていた彼女から聞いた話。

彼女が小学生の頃、学区外の塾で知り合った友達の家に遊びに行ったそうだ。
友達の家の近くの公園でブランコやフラフープをして遊んでいると近所の少し年上の女の子に一緒に遊ぼうと誘われ3人で遊んでいたそうだ。
仮に彼女をS、友達をT、年上の女の子をNとしよう。
しばらく遊んでいると、Nが言う「あそこの家知ってる?誰も住んでないけどおもちゃとかいっぱいあって面白いんだよ」 3人で行ってみようという。

Nの誘いに乗り、空き家に忍び込むことに。
伸び放題の雑草の生えた庭に、木々。 戸が開いたままの引き戸の玄関。
お邪魔しまーすとふざけながら入ると、聞いていたとおりおもちゃを入れた箱がたくさんある。
パチンコ スーパーボール 射的の道具 様々な景品 子供にとっては夢のような光景が拡がっている。
2階に上がり、また1階に降り、やりたい放題に遊ぶ。
1階の居間でスーパーボールで遊んでいた時Tが言う。
「なんか臭くない?」 居間の押し入れを指差し、腐った匂いがするという。
恐る恐る押し入れに近づくと、本当に酸っぱいような、玉子が腐ったような異様な匂いがしたそうだ。
醤油かなにかをぶちまけたような黒ずんだ押し入れの戸を開けようかどうか話していると「なにしてるのあんたたち!!」 と割れた窓の外から怒鳴り声がし、ビックリして外へ逃げ出す。

そのままN宅まで逃げ帰り、玄関先の掃除をしていたNの祖母に事の次第を話す。
すると、祖母は血相を変えて2人を家の中に入らせ、こっぴどく叱りつけたのち、こんな話を聞かせてくれた。
子供に話しているのでかなり噛み砕いた表現のため祖母の話については私の言葉で書かせていただきます。

「あそこの家は昔、お祭りのテキ屋をしていて、相当儲かった時代もあったけど、主人が酒乱で暴れて大変だったの。
外でもその素行だったから仕事のほうも次第にうまくいかないようになって、最終的に仕事を失ってしまったんだけど、ある日酒を飲んで暴れた主人が娘に手を上げた時に誤って死なせてしまったの。
それからしばらく娘の死体を押し入れに隠し生活をしていたんだけど、居たはずの娘が居なくなるなんて不自然な事を隠し通せるわけがなく近所で噂になったの。
近所への対応は全て奥さんがし、親戚の所へ預けている。という嘘で乗り切っていたんだけど、人間の死体があるわけだから匂いが酷くてね。
遂には近所で噂になったのよ。娘を殺して家の中に閉まってあるって。
そんな日々が長く続くはずもなく、とうとう奥さんは気が触れてしまって。
ある日主人を刺殺していなくなってしまったの。
今から40年も前の話だから奥さんは今も捕まっていないの」

以来、夜中に近くにある公園のブランコがひとりでに動いていたり、家の中から縁日のアレンジボールを弾く音が響いたりする怪現象が起こるようになったそうだ。
「そういえばNちゃんは?」 夢中で逃げ出したのではぐれてしまったのだろうか? Sが不安げに言うと 「Nちゃんて誰?」 とTが不思議そうに聞く。
「一緒に公園で遊んでて、あそこの家行ってみようって言ったNちゃんだよ!覚えてないの?」 と聞くSに対しTは全く覚えはなく、空き家に入ろうと言ったのはSだと言う。
Tの祖母曰く、殺された娘に化かされたのではないか?または一時的に取り憑かれ、家の中に呼び込まれたのではないかという。
この出来事以来、霊感が芽生えたのだとSは言う。

余談ではあるが、それから10数年後、Sに話を聞いた私はその空き家に連れて行ってもらう。
鬱蒼と生い茂る木々と雑草に囲まれ、もう実を付けないであろう大きな柿の木が目印のボロボロの日本家屋。
たしかにその家はそこに有った。
入り口の引き戸、窓にあたる部分はサッシの部分から壊され、何十年もの間、雨ざらしにされてきたであろう玄関の床は腐りきり床が抜けている
携帯のライトで照らすと玄関先だけでなく所々床は抜け、縁の下の柱がむき出しになっていた。

問題の押し入れを見たい気持ちはあったが、なぜか心に悲しい気持ちが流れ込み、罪悪感にかられ、それ以上の侵入をやめた。
帰り際車に乗り込んだ後もジッと空き家を見つめるS。
無言で車を走らせ街の明かりに包まれた頃Sに尋ねる。
なんか見えた?
「玄関の入り口に立ってからずっと2階でおはじきの音してた。帰りに2階の窓の所から女の子がずっとこっちを見てたの。寂しそうな顔で。
たしかあそこは子供部屋のあった場所だと思う。あの子今もあそこに1人でいると思うとなんか可哀相で…」

幽霊を見るほどの霊感のない私にも、残された感情が流れ込んでくるような不思議な気持ちになる体験だった。
不慮の死を遂げ、母親もいなくなりひとりぼっちになってしまった悲しい女の子の霊の話。

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