流れ着く島

友達の兄から聞いた話。

県内にある、某有名な自殺の名所から水死体が流れ着くので有名な小さな島に友達と三人で肝試しに行ったそうだ。
赤い橋を渡り、時計回りをするのが順路とされ、反時計回りをすると様々な怪現象が起こるとされていた。
地元では反時計回りで周るのが肝試しの定番になっていて、四人も反時計回りで島を周った。
何事もなく島の入り口まで戻り、車に戻ろうと橋を渡ろうとしたそうだ。
その時、友人の一人が橋を渡るのを拒み、また島に戻ろうとしたそうだ。
三人で半ば強引に連れ帰ったそうだが、友人は車内でも無言。
様子のおかしさはあったものの、無事自宅まで送り届け、解散。
兄もまた帰路につき、シャワーを浴びていたそうだ。

部屋に戻ると携帯電話が光っている。
開いてみると、友人からの着信が数件あり、かけ直してみる。
すると「なんか気になってみんな送り届けた帰りに○○の家見に行ったんだけど車がなくなってたんだ」
時刻は夜中の三時。
出かける場所もそうない田舎町だ。あんなことがあった後だしやばい気がする。
ということになり、友人の兄と電話をかけてきた友人とで探しに向かったそうだ。
もしかして。 そんな気持ちで島まで向かう。

すると予感は的中し、おかしな行動をとった友人の車が停めてあった。
「やばいやばい」 といい、急いで島へと続く橋を渡る二人。
すると橋の真ん中をゆっくりと、ゾンビ映画のゾンビのように、スリ歩く友人の姿があった。
「なにしてんだって!帰るぞ!」 と引き返させようとするが、とても人間とは思えない力で逆に引きずられてしまう二人。
「あぁぁぁぁ」と泣き叫び、鼻水やヨダレでいっぱいになりながら島へと歩く友人に、これはいよいよやばいと思った二人は「おい!○○!おい!」 と呼びかけながら引き止める。
しかし、二人の力でも、どうにもならず、島の入り口まで差し掛かる。
赤い橋と島の入り口には、大きな鳥居があり、鳥居を越えた右側にお賽銭箱の置かれたお堂があるのだが、あまりの恐ろしさに涙を流しながらお堂のお賽銭箱に、財布の中身をぶちまけた。
「お願いしますお願いしますお願いします」と言い、逆さまにした財布の中身をぶちまける。
すると、おかしくなってしまった友人が、まるで糸の切れた操り人形のようにへたり込み意識を失う。
そのまま、友人を抱え連れ帰り事無きを得た。

翌日、眠たい目をこすり、友人が外出しないか代わり番で見張りをしたが、何事もなく、また次の日を迎えられたそうだ。
一体何があったのかと、友人に尋ねると
「全部覚えてるよ。あの日、島を出るときに女の人がいたんだ。あまり特徴は覚えていないけど…」
「それで、あっ!助けなきゃ。あの子一人にしちゃいけない!って」
「家に送ってもらってからは、なんか寂しくて悲しくて、早く会いにいかなきゃ。俺が助けなきゃ」
そう思い、我を忘れ島へ向かったそうだ。

友人の兄いわく、財布の中にお守りが入っていて、それも一緒にお賽銭箱に入れたそうだ。
きっと何かに守られたんだ。と語る。

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