階段の真ん中には何がある?

私がまだ幼稚園に通っていた頃の話です。
私達姉弟が大きくなった事もあり、父方の祖父母の家に家族揃ってお泊まりに行く事になったのです。

祖父母の家は近くはありませんが、高速道路を使えば1時間もあれば行ける距離です。 毎月第1日曜日に祖父母に会いに行くというのがうちの家族の決まり事でしたが泊まるというのは初めてでした。

祖父母の家は借家で古く、戦後の復興の時建てられた5軒長屋が連なる中の1軒でした。
改修は何度かしているようでしたが、間口が狭い俗にいう鰻の寝床で、昼間も薄暗く日中も照明を付けていました。
間取りは玄関は2畳ほどの土間、入ってすぐ右側に小さな台所があり、上がり框を上がって4畳半の和室と階段、硝子障子を挟んで6畳の和室がありました。
その奥にはL字の縁側があり、突き当たりにトイレがありました。
そしてその縁側からは池のある苔むした小さな庭に出る事ができました。

2階には6畳の和室が1室と広いベランダがあったと記憶しています。
その日は従姉妹のお姉ちゃんも泊まりに来ていて、私達家族(父母私弟)と合わせて7人で賑やかな夕食を済ませ、1階の6畳の和室に祖父母と従姉妹が川の字に布団を敷き、私達家族は2階の和室に布団を敷き、21時頃就寝しました。
父はとても寝付きが良く、いつものようにすぐにイビキが聞こえてきました。
隣の弟も既に眠っているようでした。
母と私は普段から寝付きが悪く、その日も布団の中で寝返りを繰り返していました。

環境が変わったせいもあったのでしょうが、私はどうも眠れる気がせずトイレに行こうと布団を出ました。
すると母が 「トイレ?ついて行こうか?」 と小声で聞いてきたので 「1人で行ける」 と答え襖を開け階段を降りました。
私は弟と違い、元々怖がりではないので母も気にしなかった様子でした。
古い階段は急で小さな私は梯子を降りるように後ろ向きに手を付きながら降りていきました。

薄暗い階段のちょうど真ん中まで降りたとき、話し声が聞こえてきました。
男性、女性、子どもの声。

ああ、まだ祖父母も従姉妹も起きているんだと少し安心し、1階に降りて硝子障子を開けた時、3人は寝息をたてていました。
(あれ?何で?)
不思議に思いながらも布団の足下を通り縁側に出てトイレと向かいました。

月明かりに照らされた小さな庭を見ながら私の頭の中は”?”でいっぱいでしたが、無事トイレを済ませて眠る3人の足下を通り、階段を上りました。
階段の真ん中に来たとたん、今まで無音だったはずの階段で話し声がします。
何を話しているのかは解らないけど、複数の人達が話している声がボソボソとするのです。
その声は階段の真ん中を過ぎるとしなくなりました。

私は階段を上りきり襖を開けて黙ったまま、父のイビキが響く部屋で眠りにつきました。

翌朝、朝ごはんを食べて祖父母にサヨナラの挨拶をし帰路についた車内で母に昨夜の階段での出来事を話しました。
母は 「不思議だね~」 と言っただけでしたが、それから2度と祖父母の家で泊まる事はありませんでした。
特にその後、怖い事が起こったとか病気をした怪我をしたとかはありませんでしたが、少し不思議な体験でした。

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