激安ペンション

これは数十年前に、男4人女4人の同級生で、
ペンションを借りてバーベキューをした時の話しです…。

この時の季節は、真夏でどこのペンションも予約いっぱいでした。
僕達は、ダメ元で予約無しのアポ無しでペンションの事務所に伺いました。

そこには、60代位の夫婦がいました、 おばさんの方は笑顔で『いらっしゃいませ』とお茶を出してくれましたが、 おじさんの方は、タオルを首に下げて奥の部屋で座っていて、 ずーっと僕達を遠くから睨んでいるかんじでした。

それに比べてオバさんは愛嬌よく
『ごめんねぇ、この季節は全部予約でいっぱいなの。他の部屋も先月の台風で修理中なの』
と答えてくれました。
『い、いえいえ、ノープランで遊びに来ている僕達が悪いので』
僕は返事をしながら、心の中でため息をつきました。

あぁ、色々大変な時に来てしまったなぁ。
さすがに、予約無しじゃ無理だよなぁ…。

僕達は、ビーチに場所を変更し、バーベキューをしょうか話し合っていたら、 奥の方から睨んでいたおじさんが、かすれた声で、
『おい。おまえ達、クーラーもテレビも、何にも無い部屋があるけど、どうする?』と言った。

その時! 
オバさんは『待って、あの部屋は…』
と少し慌てた様子でオジさんに発したら、
オジさんが、
『いいじゃねぇか…。他の部屋の修理代の足しになりゃ。』
と、言われたオバさんも、 お僕達に気をつかったのか、
『あ、あの部屋は、何年間も使われていないからすごく汚れているの。それでも大丈夫?』と言いました。

僕達は大丈夫でしたが、まず女子達が、大丈夫かどうかを確認をしました。
そしたら、女子達は『バーベキューが出来て、一泊ができれば、十分だよ♪』と言ってくれました。

皆の意見が一致したので、 『は、はい!是非その部屋で一泊させて下さい』と、電話番号と名前を書き、見事に部屋を激安で借りる事ができました。

すると、オジさんが立ち上がり 奥の部屋から歩いて来て
『おい。案内するからさっさと付いてこい』
と、また睨まれた。 
正直、俺達は、愛嬌が良くニコニコしたオバさんの方に案内してほしかったなぁと思ったが、まぁそこは、しょうがない。

するとオジさんが、
『この部屋は、長い間、誰にも借りられていない…だから30分位待っておけ。掃除してくるから…』
僕達は『自分たちも手伝わせて下さい』と言うと、
オジさんは『お前達はお客様だろ。お客様に掃除などさせられるか』と、捨て台詞を吐いて部屋に入って行った。

僕『なんだ、怖くて愛嬌がないけど、とても優しいオジさんだなぁ』

そして30分以上経った頃に、オジサンが『おーい。入って来い』と、部屋の中を案内してくれた。

部屋の中は思ったよりも広く、そこまで汚くなかったが、不気味だった。
でも僕達の中には、幸い誰も霊感がなかった為
『まぁ、バーベキューしながら、朝まで楽しめる分には問題点ないじゃん♪』
と、気分を入れ替え、時刻も昼の4時になり、庭でバーベキューの準備を始めようしたら、 オジさんが僕達に
『一つだけ約束してくれ。この部屋は古いから、床などに気を付けて、家具などは動かさないでくれ』と言って事務所へ帰って言った。

それから、僕達が、バーベキューを開始してから、
気付いた頃には、夜中の1時。
バーベキューコンロもすっかり焚き火状態になっていて、落ち着く雰囲気に変わっていった。 僕と男友達1人、女友達2人の4人意外は既に眠りについていて その後も、テレビが無かったのが逆に新鮮で、昔話に華を咲かせて盛り上がった。

そして、会話も弾まなくなった午前2時過ぎ頃…。
女子の1人Aちゃんが、タイミング良くトランプを取り出した。
そしてババ抜きが始まった。
酔っ払い同士のババ抜きは結構盛り上がり、その中でも一番酔っ払った男友達がババを引いて負けた。 負けた瞬間、男友達は『クソー!!』と、勢い良くバザーッ!と、トランプを部屋中に撒き散らせた。
皆がトランプを拾いはじめたら、女子の1人Aちゃんが、
『ねぇ。タンスの下にカードが入ってるんですけどー』
とキレ気味に言ったので、 酔っ払った男友達は、ヨタヨタ歩きでタンスに近づき、タンスの端々を掴んで移動しようとした時、 ドアが『ガチャン』と開いた。

玄関には、オバさんがニコ~ッと立っていた…。
僕は『す、すみません、うるさかったですか?』と謝ると、
『いいえぇ~、あなた達が心配で一目見に来たの。あ、この部屋は古いから、あんまり家具には触れないようにねぇ』と帰って行った。

オバサンが帰ると、 またAちゃんは
『ねぇ、タンスの下のカード、早く取ってよー!!ゲームできないじゃん!』
と男友達に言った。
でも、男友達はさすがに、酔いつぶれて寝込んでしまい、それをきっかけに残りの皆も眠りについた。

僕は、タンスの下のカードだけは取ってあげて寝ようと、 重いタンスを引きずりながら移動した。
その時、『ボコッ』と床板とトランプ数枚が床下に落ちてしまった。
僕は『うっわぁ。本当にボロいな。てかクッさ』と、面倒くさがりながらも、上半身を床下に潜らせ、トランプを拾おうしたら、 急に人の気配を感じた…。

だれか目が覚めて起きてきたのか……?
僕は床下に潜らせた上半身をもう一度起こして部屋を見渡した。
なんだ気のせいかぁ、と ふと視点を玄関の方に合わせると、
オバサンが真顔で僕を見ていた!!!

僕は体が硬直するぐらいびっくりして声も出なかった。
『これは、さすがに異常な状態だ…。オバさんの昼間の顔と真逆すぎる…』
僕は恐怖のあまり、オバさんから目線を外ずす事ができなかった。
そしてオバさんは、何も喋らずに 寝ている友達を避けながら近づいてきた。 僕の目の前まで近づいたら、オバさんがしゃがみこんで
『ど、う、し、た、の?』とニタァ~と笑った。
僕は『い、いやぁ、友達のトランプを拾おうとしてました…』
と声にならない声を発したのを最後に、 気を失ってしまった…。 

次に目を覚めたのは、朝の5時だった。
僕は数時間前の事を思いだし、すぐさまタンスの方を見たら、 タンスは元の状態だった。
あぁ、夢か…、良かった。 
僕は思った。
逆に夢じゃないとすると、何故そこまで床を気にするのか、 何故タンスを動かそうとすると、タイミング良くオバさんが現れたのか…。

すっかりお酒もぬけて酔いも覚めて、考えれば考えるほど怖くなり とにかく気持ちが悪くなり、早くこの部屋から出ようと皆を起こした。

『おい!起きろ!皆で朝日を見に行こうぜ』

僕は、皆をパニックにさせない為に、あえて深夜の出来事を隠した。
半ば強引に荷物を持たせ、部屋をあとにした。
僕は、あのオバさんに会うのが少しトラウマになっていたから、 ババ抜きをしていないメンバーB達に、カギの返却を任せた。

どうやら、早朝だったからか、オバさんとオジさんは、 事務所の奥の部屋で眠っていたらしく、 メンバーB達は奥の部屋のテーブルに、お礼の言葉のメモとカギを置いて帰ろうとしたら、 メンバーの1人が目を見開いて、 テーブルの上にあったパソコンの画面を指さした。
『おい!おい!おい!おい! あの映像見てみろ』
と真っ青な顔で言った。

その映像は、さっきまでいた僕達が借りていた部屋の中の映像だった…。
そう僕達はずっと監視されていた。

メンバーB達が慌てた様子で事務所から出てきた。
とにかく走って離れた所で、僕も数時間前の出来事も皆に伝えた。

その時、僕の携帯が鳴った! 着信の番号は見に覚えの無い番号だったが出る事にした。
『もしもし』と言うと、 知らない女性が
『あ、もしもし、○○君? あなた達今どこにいるの?』と、
電話の相手はなんと…あのオバさんだった!!

あぁ。 そう言えば、部屋を借りる時に名前と番号を書いたんだった……。
すると、オバさんが
『あなた達…事務所に戻ってらっしゃい…。忘れ物があるわよ…』
僕は『え?忘れ物?何ですか?』と聞いたら、
オバさんが『ト、ラ、ン、プ』と答えた。

あと後日談ですが、僕達が一番驚いた事件が起こりました。
それは、あの夫婦が管理しているペンションが全て差し押さえされて、 僕達が借りた部屋の建物を取り壊した再に、床下から2体の首なし人骨が発見されたそうです。
この夫婦は、逮捕時の取り調べで、 その部屋の床下に死体を埋めた後も、数回はお客様を泊めたと供述しており、 もし、お客様に遺体の存在を気付かれれば殺して床下に埋めていたとも、語っていたらしい。

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