真夜中の病院のトイレ

これは私が小学三年生か四年生ぐらいの頃、

ちょっとした病気になり、入院した時の話です。

病室は二人部屋で、同い年の女の子とはすぐに仲良くなりました。

入院して三日目の夜、トイレに行きたくなりました。

時計を見ると午前二時…正直眠いし気味が悪いと思いましたが、

トイレに行ってスッキリしないと余計に眠れないと思い、渋々私はベッドから起き上がりました。

廊下は薄暗くて人影もなく、少し怖かったのですがトイレは真昼のように明るくて少し安心しました。

入り口でスリッパからサンダルに履き替えて、手前の個室のドアに手をかけようとした時です。

いきなりドアが開いて私は心臓が止まりそうになりました。

何故かというと、ミイラのように身体中に包帯を巻いた人が出てきたのです…

鼻をつくような消毒薬の匂いと一緒に…。

その人は頭も顔も包帯が巻かれていて、

目と口だけしか見えなかったのを、今でもはっきりと覚えています。

ピンク色のパジャマの半袖から出ている腕も、手足の先も包帯でぐるぐる巻きにされていました。

その人は何も言わずに俯いたまま、とても静かに廊下に出ていくと、

片足を少し引きずりながら暗闇に消えていきました。

次の日、検温に来た看護師さんに昨日の患者さんについて話してみました。

私「あの、ミイラみたいに体中包帯巻いた患者さん、どこが悪いんですか?」

看護師さん「ん? ああ、佐伯(仮名)さんのことかしら…若い女の人でしょ。

火事で大火傷したんですって。でも、どうして知ってるの?」

私は昨日の夜トイレで会ったこと、

その人がピンク色のパジャマを着ていたことや片足を少し引きずっていたことなどを話しました。

すると、聞いていた看護師さんの顔から血の気が引いていくのを感じました。

「……まさか…そんな…死んだ人…」

私が聞き返すと、看護師さんはその患者さんが一昨日の朝に亡くなったこと、

まだその患者さんが病院に、地下の霊安室にいる事を話してくれました。

私があの夜に出会ったのは、その患者さんだったのでしょうか…

もしその患者さんだったとしたら……

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