黒い物質

昔の友人から10年以上前に聞いた話です。

友人の同僚にAさんという当時20代の男性がいたそうです。
Aさんは大学を卒業して就職したものの数年後に脳に悪性腫瘍が見つかりました。
腫瘍は非常に手術が難しい位置にあったようで、有効な治療を施すこともできず経過観察でいたずらに数か月の時間が過ぎていきました。
その間にも腫瘍は拡大し、視神経を圧迫し遂には片目の視力をほぼ失うまでになってしまいました。

ある晩、Aさんが洗面台の前で歯を磨いていると突然はげしい悲しみが胸にこみあげてきました。
「ああ自分はなんて不幸なのだ、自分はこのまま若くして死んでしまうのだろうか」と自身の境遇が辛く切なくてどうしようもなくなり、
涙がとめどなく流れました。悲しみが涙腺だけでなく鼻腔をも刺激し涙と共に鼻水も流れます。
その時、ふいに鼻の奥に違和感を覚えました。
「ん?なんだ?」と思っていると、その刹那真っ黒なゼリーのようなドロドロとした物質が片方の鼻から出てきて
そのまま洗面器に落ち排水口に流れていったそうです。
数日後、病院に定期健診に行きMRIを取るとなんと腫瘍がきれいに消えていたというのです。
本人も担当医も歓喜したと同時に大いに驚いたということです。

この話のポイントであるAさんの鼻から出てきた
「真っ黒なドロドロしたゼリー状の物質」がなんだったのか、
それが気になりましたが当然ながらどう解釈してみようもありません。
もしその物質が排水口から流れる前になんらかの形で保管され
専門機関で研究されていたならば医学の発展に寄与するような類のものだったのか、
それとも現代医学の域を超えた未知のなにかだったのか、
あるいは実際にはそんな物質は出てきておらず
Aさんにだけ見えた幻のようなものだったのか、

今でも時折この話を思い返しては色々と考えることがあります。

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