迷子になりかけた話

大きなショッピングモールや観光地、遊園地にイベント会場、
様々な所で迷子を知らせる放送を聞く事があると思う。

子どもは好奇心旺盛で夢中になると周りが見えなくなる事がある。
親だってつい目を離してしまう事がある。
でも、迷子になる理由はそれだけではないかもしれない。

私は小学生になる前、エレクトーンを習っていた。
続けていたら良かったのだが、小学校に入学して以降止めてしまい、今では全く弾けない。

さて、そんなエレクトーン教室に通っていた時の話である。
ある時、隣町の文化会館で発表会が行われた。
発表会は無事終わり、帰路につこうと会館を出る。
ふと先程まで一緒にいた母の姿を前方に見つけ、私はトコトコと駆け出した。
そして、その母の後ろ姿を追い掛けるように付いていった。

何故かわからないけれど一緒にいた友達の事も忘れ、ただただ母を追う。
母は私から5メートルぐらい先でバスに乗り込んだ。
私が急いで母に付いて行こうとした時だ。

「あんた、どこ行くの!」

背後で母の声がした。
私はキョトンとして振り返った。
そこには教室の友達とそのお母さん達、そして私の母がいた。

「勝手に先に行かないの!」
と母にちょっと怒られて涙目になる私。

迷子を知らせる放送を聞くと思い出す。
あのままバスに乗っていたらどうなっていたのかと。
お金も持っていなかったし。
それにしても、どうしてあの後ろ姿の人を母だと思ってしまったのか、
今でもわからない。

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