黒づくめ

僕が専門学生だった頃の話です。

高校を卒業して車の免許を取得した僕は、
毎週週末になると友人と車で心霊スポット巡りばかりしていました。
僕は兵庫県に住んでいて兵庫県の心霊スポットを制覇したといってもいいくらい 心霊スポット巡りにはまっていました。
その中で一番恐怖を感じた話をしたいと思います。

ある日の休日、茜色した空が広がる夕方、まだ暗くもなっていないのに 僕は友人と兵庫県で1番といわれている心霊スポットに行くことにしました。
そこは以前にも数回、家が近いということで
行ったことのある心霊スポットです。
そこは田舎でまわりは家が数件建っているだけ、もともとは広大な牧場だったらしく 一家心中があったとか、
そのすじの人が管理している土地だとか、 どれも噂なので確かなことはわかりませんが、入り口が武家屋敷に似ていることから
みんなからは武家屋敷と呼ばれていました。

過去に一緒にいった友人がそこに訪れた翌日、謎のぶつぶつが体にできたり
専門学校の友人5人といった日には、友人全員そこでうなり声を聞き 翌日学校で僕も含めそこに訪れた友人だけ同じうなり声を聞くなど
不可解なことが起きる心霊スポットでした。

その日は茜色で空は明るいのに小雨が降っていました。
武家屋敷の近くの空き地に車を止め友人と二人でその中に入ることにしました。
入り口は大きな門になっていてそこを通り抜けると細い一本道が続き
左右は木や草で生い茂り、頭上も木で空を隠していたため夜に入ると月明かりもないためライト無しでは入れません。
少し進むと右側にボロボロの小さな木造の建物、さらに奥には左側にボロボロの木造の建物、
そこまで歩いていくと僕たちは何か落ちていることに気が付きます。
それは小さなビニール傘ときれいに並べられた女の子用の小さな靴でした。
僕は「なんでこんなとこに子供の靴があるん?おかしくない?」と友人に言いました。
友人は同じ心境だったらしく考えてもわからないので、先に進むことにしました。

少し進むと道がY字にわかれ、そこで僕は異変に気付きます。
Y字の右側の道に以前にはなかった腰あたりまでの高さの正方形の黒いものが手前と奥にありました。
僕と友人は同時に無言で足を止めそれを凝視しました。
すると手前の黒い物体がカメラのフラッシュの様なものを光らせたのです。
僕はそれにびっくりして友人に気をまわす暇もなく来た道を全力で戻りました。
入り口を出て友人も走って戻ってきので、そこで友人にさっきのことを確認しました。
「さっき黒い物体あって、フラッシュたいたよな!?」
すると友人は何のこと?という顔をしながら
「人が倒れとったんよ!」と見たものがまったく違いました。

友人とあーだこーだ言いながらもう一度確認しにいくことになりました。
再び入り口を通り細い道を友人と並列で歩いていると 僕は見つけてしまったのです。
名探偵コナンにでてくる犯人役のような頭から足まで真っ黒の人が 歩くそぶりを見せず空中を移動するように左側の建物へ消えていく姿を。
友人と僕は一瞬時が止まり、やばい、と頭が理解したころには全力で来た道を走って戻っていました。

車に急いで乗り友人に確認したところ友人も頭が混乱していたようですが
見たものは同じだったようです。
そこからは急いでその場から離れました。

あの様々な出来事はなんだったのでしょうか。
今その場所は入り口を通り抜けたところで
木が倒れていて先へ進めなくなっているようです。

朗読: ゲーデルの不完全ラジオ

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

閉じる