私には一時、ひどい悪癖があった。
いわゆる拾い癖…といっても何かものを拾ってくるわけじゃない。
霊専門である。
そんな私をいつも助けてくれていたお師匠さん的なお爺さんによれば、
一週間7日あったら6日拾って帰って来とる…とのこと。
ついてくるものは別に人間とは限らない。
無類の猫好き・犬好き、動物大好きの私には、やたら動物霊が寄ってくるらしいのだ。
よく世間では動物霊は始末が悪いというが、なぜか私につくのは皆、
遊んで遊んで、構って構ってチャンばかり。
そんな経験の中でも大笑いの話をひとつ。
当時私はド田舎で猫数十匹と暮らしていたのだが,ある夜帰宅すると、
ニャンズたちが一斉に大暴れし始めた。
こりゃなんじゃ?と思っていると大人猫たちは鬱陶しそうにいている。
その一方で、子猫たちは遊び相手が来た、とばかりに大興奮。
しばらく様子を見ていると、くーんくーん、と子犬の甘え声がニャンズの声に交じって聞こえる。
あちゃー、また連れて帰ってきたか、と思ったが、何せ純真無垢な子犬ちゃん。
邪険にもできないし、かといって言い聞かせるには分別がない。
どうしたもんじゃろ、と考えていたら数時間後、
我が家のゴッドマザー猫が、おっぱいを与えるような仕草をしている。
不思議なことに、犬のしっぽがパタパタ揺れる音が聞こえる。
すると御年20歳のゴッドマザー猫が、にゃごにゃご話している。
どうやら子犬ちゃんに話をしている様子。
するとどうだろう、遊べるだけ遊んで、
おっぱい飲んで甘えて、ころりと寝てしまったみたいだ。
ほかのニャンズたちもやれやれといった様子で、子犬がいると思しきあたりをいったりきたり。
小半時過ぎたころだろうか、どうやら目を覚ましたらしい子犬ちゃんは、
ニャンズたちにさようならの挨拶をして帰ってきたようだ。
その時初めてその子の姿が見えたが、どうやら日本犬の子だったようだ。
その顔は、何とも嬉しそうで、また名残惜しげであった。
ゴッドマザーが黙って前足で、その子のお尻をつつくようにすると静かに消えていった。