痛み

仕事でのストレスで胃痛が一番ひどい時期があったんだ。
朝起きてまず吐き気と痛みがあり、食事もうまく取れない。
そんな時期が一月以上続いた。

昔から胃が弱く、学生時代から胃痛にはよくなってたからあまり深刻には考えていなかったのと、行く暇が無かったので病院には行ってなかった。
……あと正直面倒くさかった。
近所にある病院って、評判の悪い所とめちゃくちゃ評判のいい所の2択で、
近所の人はもれなく評判のいい方に行くから二時間待ちとか普通だった。
だから、何か面倒くさかった。
接客業で当時は繁盛期な上に、
上司である社員の尻拭いもしていたので余計にストレスだった。
でもそれが続くと日常になって慣れたつもりになるんだ。

いつものように疲れ果てて就寝したある夜、夢を見た。
昔ながらの日本家屋の縁側に立っていて、外は暗い。
明るければ綺麗な庭なんだろうな、と思うくらいには
整っていたように見えたかな。
石灯籠もいくつか遠くにあって火が灯ってた。
私は物珍しくてキョロキョロしてた。
旅行にでも行かないとこういうのは見れないから。

ふ、と自分の正面に人が立っている事に気が付いた。
私は話しかけようとしたが、それと同時に何かが腹部を貫いた。
ゆるゆると視線を下げると、刀。刀が刺さってた。
痛みはないのに異物が自分の体を貫いている、というのはとてもリアリティがあり、金縛りになったかのように身動きが取れなくなった。
後ろに下がることもしゃがむこともできず、視線をゆっくり上げて見ると、
背の高い和服の男性が刀を握ってる。
表情はよく見えないがとてつもなく怒っていることは分かった。
刀が刺さってるということよりもそっちの方が怖かった。
その人は低い声で何かを呟いたあと、刀を引き抜く。
血とか内蔵とか出てたらどうしよう、って思ったけどそんな事はなかった。
刺される前と見た目も変わらなかったので安心して、そこで目が覚めた。

その夢を見た後症状が更に悪くなり、ようやく病院に行った。
動けなくなる位には痛かったが、
救急車を呼ぶと評判の悪い病院に搬送される。
タクシー呼ぶより早いから歩いて頑張って行ったよ。
点滴打って、胃カメラも飲んで、結果は胃潰瘍。

少しのお休みを貰って薬も飲んで回復してきた頃、問題の上司は退職。
職場環境は一気に良くなった。
上司の退職理由は鬱の悪化らしい。
あの夢とこれらが関係があるかは分からないけど
悪いものを斬ってくれたんだろうか?と私は思ってる。

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