ポンコツ劇団行状記②絶叫(笑える話)

これも劇団時代の話、ある公演の最中にいつも歌唱指導とかピアノ演奏とかお願いしている音楽家の先生が、ひょっこりと楽屋に顔を出した。

小柄で温厚、無類の好人物。
ただ一つ欠点があるとすれば、女性に優しすぎて、
しかもボンボン風だからやたらモテる。
普段から何もなくてもフラリと遊びに来ては、くっちゃべって帰っていく人だったからその日も、と思ったらそうはいかなかった。

彼が入ってきたとたん、私ともう一人、霊感もちの演出助手の女の子が
「ぎゃあ!」と大絶叫。

そりゃびっくりしましたよ。
だってびっくりしましたよ、
彼の小さな姿に、すごいものがしがみついてたんだから。

私たちが霊感もちのことを知っているご本人大パニック
「何々どうしたの、何があったの」
… おろおろするばかり。

「あんた何連れてきたの!」
怒鳴りつけると「えっえっ」と一層慌てるばかり。

この先生かなり鈍感でもある。

「身長は170超えるくらいの長身細身で、黒髪が腰のあたりまである、ちょっとスペイン系みたいな美人が、すごい形相であんたに負ぶさってんだよ!」

それを聞いたご本人、楽屋から舞台まで聞こえたというほどの大絶叫

「女房だ、生霊だ」
…なぜかその姿を見たら怖いの通り越して大爆笑。
なんでも朝っぱらから浮気がばれて、奥さんと大喧嘩、家からたたき出されて仕方なく劇場にやってきたらしい。

「でもさ、ここまでついてくるんだから、奥さん相当お怒りだよ。しばらく帰れないんじゃないの」
というと、先生何を思ったから背中の奥さんに
「南無阿弥陀仏、勘弁してください、助けてください」
とやりだした。

これでまた大爆笑、自分の女房の生霊を成仏させようとした間抜けを初めてみた。その間も奥さんはずっと背中にしがみついていたが、
あほらしくなったのか、大きなため息をついて消えていった。

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