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頷かなければよかった

この話を書こうと思ったのは最近学校のクラスメイトが一人転校したからです。
理由はもちろん僕と、夢の中にたまに出てくる女性のせいだと思います。

単刀直入に言います。
僕は人から嫌なことをされたり、
危害を加えられると夢の中に決まって女性が出てきます。
そして僕はその女性と夢の中で何かと引き換えに、
危害を加えた本人を呪っているようです。
初めてその力の存在を知ったのは小学生の頃でした。
中学年になって、クラスのガキ大将みたいな、
たなかくん(偽名)から嫌がらせを受けたことが全ての発端です。

嫌がらせを受けて1ヶ月くらいしたとき、ある夜に夢を見たのです。
それも、妙に明るい雰囲気の。
夢の内容は、はじめ身に覚えのない和室でぽつんと一人正座をしてたら、
畳を摺り足でサッサッサッと細かく歩きながら女性が近づいてくるのです。
女性は紅の生地に綺麗な鶴の模様の入った着物を着ていて、
山吹色の帯を腰に巻いている。
純白の足袋を履き、作法も整っている。
見ていて僕は、とても惚れ惚れとしたものです。
そしてその女性は僕の手前で止まって座るなり、
僕の顔を覗き込みながら
「ねぇ、ねぇ、たなかくんでしょ?くれたらば、~~~してあげるよ」
みたいなことを言った気がするのです。
夢なのであまり覚えていませんが、
僕はそんなことを聞かれたあとに決まって頷くという内容となっています。

目が覚めると、確実に前日よりも目が見えづらくなっている気がする、
というか視力が確実に落ちている。
これがあの夢を見たあと決まりです。
その日から、夢の中で名前を言われたたなかくんは
学校へ来なくなってしまいました。

今はあのたなかくんがどうなっているかは分かりません。
ですが、風の噂でこんなのが学校中に広まったのです。
「たなかくんは、○日(僕が女性の夢を見た日)の夜にいきなり家出して、
30分後に見つかったけど、頭がおかしくなって帰ってきたんだよ~怖いよね~」
なんていういろんな意味ですごい噂です。
そのあとで、そのたなかくんが僕に嫌がらせをしていたという事実と、
彼は精神病院に入院しているという事実が
学校の先生たちや生徒たちに公になりました。
担任のさかた先生と服担任のたなべ先生から色々なことを聞かれました。
もちろん、家出のことに僕が関わっているのではないのか?とか、
どんな嫌がらせを受けたのかとか、
お母さんは僕が嫌がらせを受けていたことを知っているのか、など。
デリカシーの欠片もないことを根掘り葉掘り聞いてきたのです。
尋問は教室とは別室にて午後のほとんどの時間を惜しみ無く使い、
大体1時間ほどで終わり、その日はすぐ下校しました。

その日の夜もあのきれいな女性が夢に出てきたのです。
女性は言いました。
「ちょうだい、だから、さかた先生と、たなべ先生……~~うよ」
僕は聞き返しました。
「何をするんですか」と。
女性は嬉しそうな顔でこう答えたのです。
「僕くんに悪い人は呪うの。
目がなくなったら次は何をくれるのか考えておいてね」
やっと「~~」の部分の言葉が聞けたのです。
だからといって首が横に振るはずもなく、その日も首をただ縦に動かしました。
そして目が覚めて、また目が見えづらくなってしまいました。

その日別の先生が担任になりました。
その先生から聞きましたが、昨日、さかた先生とたなべ先生は
それぞれ別の時間、別の場所で交通事故を起こしてしまい、
双方とも頭を強く打ち昏睡状態だと聞きました。
その日からはもう、
たなかくん、さかた先生、たなべ先生の話題は消え失せました。

現在その事件から何年か経っています。
たなべ先生は普通に生活しているようですが、
さかた先生は帰らぬ人となったようです。
たなべ先生は教師を辞め、転職したようです。

今は視力の低下が止まりました。
ですが始めにお話しした転校した子の件で、
僕は喘息のようなものを発症しました。
母は医者にみせようと僕に言ったのですが、母にも影響があったようです。
僕は、母と自身の健康さえあの女性に売ってしまった。
次はきっとこの話を聞かせてしまった父なのでしょう。
またあの女性に会えると思うと、手段を選ばなくなってしまう自分が最低です。

僕とあの女性は、今夜も会えることでしょう。

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