なんでバックしたらんかったんや?

これはかれこれ30数年前の話。

まあはっきりした地名はかけないが、
北陸に向かう高速道路のあるサービスエリアでの話。
熱いうどんをすすりながら、休憩していると2人連れのトラックドライバーが
休憩所に入ってきた。

一人はまだ20代だろうか、もう一人は海千山千、といった感じの初老の男。
何気なく見たら、若い男が異常なほどに元気がない。
別に気にもしなかったのだが、たまたま時間帯なのか休憩所はガラガラ。
二人の話も何気に耳に入ってしまう。
どうやら元気のない若い男、重大事故を起こしたらしい。
ハンドル操作を誤って、自転車をはねた、相手は意識不明の重傷で、
一つ間違えたら一生寝たきりだ、
としきりに年配のドライバーに涙目で訴えている。

嫌な話を聞いてしまったな、と思い、席を立とうとすると、
年配のドライバーが大声お上げた。
「あほかお前は!なんでその時、もう一遍バックしたらんかったんや」
呆然とする若いドライバー・ベテランは言い放った。
「そう言うときは、もう一遍少しだけバックしたるんや。
そうすりゃ相手は苦しむことなく仏さんや。
お前も一生,相手のこと考えんでも済むやろ。
死なしたったら家族にもまとまった銭も入るし、それが礼儀というもんや」
心底ぞっとした。

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