そんなあほな!

これは友人の話。

数年前、仲間数人で釣りに出かけた友人たちは、大量の釣果に満足しきって、
ご機嫌で帰路についていた。
ちなみに渓流釣り。
山奥の清流で、イワナなどヤマメなどをかつてないほどに釣り上げた。

帰りがけ、仲間の一人が「おっ、孫の土産にしたろかな」といって
何やら手近にあったビニール袋に入れて助手席に乗り込んできた。
それが悲喜劇の始まり。
いいおっさんばかりが5人、4WD車に乗り、
山道を快調に下っていると少し険しい峠に差し掛かった。
少しスローダウンしようかと運転していた友人はブレーキを踏む。
「カチン」という音がして全くペダルが踏めない。何度やっても同じ。
「あかんブレーキ効かへん。シートベルトしっかりしてくれ!」
焦った友人の声に車内のおっさんたちも騒然。
必死でシフトダウンでエンジンブレーキをかけ、サイドブレーキを引く。
いくら4WDでもこれだけ急激な操作にステアリングもついていくはずもなく、
車はそのまま道端の山肌に接触、
大破こそ免れたものの、愛車は哀れ傷だらけ。
「急にブレーキ踏めんようなってん!カチカチいうて何かひっかかっとる!」
蒼白のドライバーの言葉に、助手席に乗っていた友人が妙な顔をしている。
なんとも申し訳なさそうな…
「どないしてん?」
その様子を見た後席の仲間が首をもみながら声をかけた。
すると助手席の友人、「すまんワシが原因や」と平身低頭。
何事かと全員車から降り、改めて運転席を見る。
「?」
ブレーキペダルの下に確かに何かいる。
以上に鈍い動きでゴソゴソしている。
なんとまあまあのサイズの亀だ。
「孫が喜ぶ思うてな、ビニールに入れて連れてきたんや。
そんな動くもんやないし、と思って足元に放り出しといたら、
いつの間にか運転席のほうまで移動してた」
しかも間の悪いことに、
ブレーキペダルと床の間にピッタリ収まってしまっていたらしい。
そりゃあの堅い甲羅が詰まってたらブレーキ効くわけもない。
おっさんたち唖然。

後日、カメは近所の神社の池に釈放。
車の修理代は、連れてきた張本人が全額支払ったそうである。

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