見回り

これは私が18の時初の就職で自衛隊に入った時のお話。

自衛隊は入隊するとすぐ色んなところに配属とはいかず、
教育隊と言う場所に入れられそこで訓練をし、色んな部隊に配属されます。
これは教育隊での出来事です。

教育隊には新入りが寝泊まりする隊舎というものがあり、
ひとつの階に1部隊が寝泊まりしておりそれが7階まであります。
隣にも同じような隊舎が立っておりこちらの方が少し古いです。
私は少し新しめの隊舎4階で仲間たちと寝泊まりしてました。
訓練も厳しく就寝となると泥のように寝る日が多かったのです。
しかし、余裕があればみんなで
夜にコソコソ修学旅行の旅館の夜のようにコソコソ喋ります。
コソコソ喋る理由としては、私たち新入りを指導する班長がいまして、
毎晩見回りに来るのです。

ある日、就寝後部屋の友人達と喋っていると、
廊下の奥の方からコツ、コツと歩く音が聞こえて来ました。
私の寝ているベッドは1番ドアに近くよく聞こえたため
部屋の友人5人に「おい、見回り来たぞ!」と教えみんな寝たフリをし、
少しずつその音は近づき、扉がガチャ…と静かに開いた音が聞こえ、
数秒後に閉まりました。
そして今度は2つ隣のベッドの友人が薄目で確認し、「おい、いったぞ!」と教えてもらいまたコソコソ喋り始めました。
見回りが来たのは10時30分頃、基本は1回見回りしたら来ないと見てました。

しかし11時30分頃、突然扉が開く音が聞こえ、
ドキッとしながら寝たフリをしました。
話に夢中になりすぎて足音聞こえなかった?
などと頭の中で考え寝返りを打つふりをし
窓側の2人の方を向き薄目見ると私の隣の人が目をハッキリ開け
私の頭上近くを、見ながらフリーズしてました。
私は(まさか班長が俺のベッドの頭側にいるのか!?)と内心思い、それを見てフリーズをしていると考えると少しにやけてしまいました。
しかし、友人はゆっくり俺の方を向き口をゆっくりパクパクさせ始めました。
よく見ると何かを訴えようとしているのが分かり
よく見ると 「み る な」 と喋ってるように見え、
その顔はいつもの優しい顔ではなかったため
これはマズいと思い、目を瞑りました。

目を瞑るとやはり考えてしまうんです。
俺の頭上には何がいるのかと。
そう考える度に私の上に何かいる気配が強くなっていきます。
そして、やはり視線を感じることがわかりました。
誰かが私を見ていると。

思い切って目を開けそれを確認しようとはしたのですが、
さすがに怖くて見ることもなく、寝ようとした瞬間、
2つ隣のベッドの友人が「あああああ!!!!!」と叫び皆飛び上がりました。
1人が確認しに行き「おい〇〇大丈夫か!?」と聞いていたが
なんと2つ隣のベッドの友人は寝ているらしく、
悪夢かなにか見たのだと思ったのか、
確認した友人は「一体なんなんだ…」と言って、
また寝ようとベッドに戻り寝ました。

しかし、私はその時を現場を薄めながら見てしまっていたのです。
2つ隣のベッド友人がなぜ大声を上げて寝ていたのか。
なぜならそいつはこちらを見て首を上げ立ち上がる姿勢をとった時、
私の頭上近くを見て大声を上げそのまま気を失ったからだと思う。
私は1層怖くなり、その日寝れたのはその後2時間後。
何とか自己暗示で頭上にいるのは班長だと思わせ何とか寝ることができた。

次の日あまり聞きたくなかったが、友人に昨夜の事を聞いた。
友人は
「お前、見てなかったのか?あれを?お前の頭の真上にいたんだぞ!」
と言われ、聞いた。
「一体何が俺の上にいたんだよ」
友人は
「女。髪の長い女がお前のベッドの頭側から覗くようにお前を見てた」
と、言われ私は
「女の霊?ここは男しかいない隊舎だぞ!?まさかビビらせようとしてんのか!?」
と言ったら隣から
「いや、いたよ」
とすぐ隣のベッド友人が話に入ってきた。
嘘だろと思いながらそいつにも聞いてみた。
「おれもお前がいる方を見て寝ようとしたら目を開けたらいるんだよ。女が。
その時お前が少し目が空いてたから、
おれは必死に見るなとしか言えなかったんだよ。
だって体が動かなかったんだ」

それを聞いて私は班長に話をして部屋を変えもらうことにした。
それ以降その女の霊の話は聞かなくなった。

しかしこの隊舎、幽霊がいると言われてもあながち間違ってはいない気がする。
班長から聞いた話だが、この隊舎1階は今倉庫になっており、誰も人はいない。
しかし夜人の走る音や猛だけしい男の号令をかける声など聞こえるらしく、
別の回でも夜トイレに行く時見たことないやつとすれ違ったとか、
上の階から夜にドンドンドンドン床を叩くような音が聞こえて、
次の日喧嘩騒動になったが結局誰もなにもしてない、
という話をよく聞くのだった。

数年たった今でもあの時の事を思い出すと寒気と鳥肌が立つ。
まだその隊舎は健在する。
海が近いため、もしかしたら男女問わず幽霊が流れ着き、
そこを住処としてるのかもしれないと私は思う。

朗読: 【怪談朗読】みちくさ-michikusa-

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

閉じる