まだいるよ。

これは先月の私の身に起きた話です。

仕事も休暇をもらいたまには旅に出ようと思い都会に行った。
買い物メインでしたかったため、
ホテルは少々ケチり安いカプセルホテルに泊まった。
昼間に買い物も済ませ夜飯も外で食べ、カプセルホテルにチェックインし、
フロントから「部屋は028です」と言われ、カプセルのある部屋の階へ上がり、
部屋を1周して自分の寝る部屋を見つけた。

部屋は上と下にあり目の前にはロッカーがあり、私は下の部屋だった。
今回は平日だったのもあったのか、あまり人はいなかった。
お風呂に入り疲れてたためすぐ寝ようと思い、カーテンを閉め就寝した。

私はいつもイヤホンを付け寝るのだが、
イヤホン越しからでも分かる何かの音で目が覚めた。
時間は深夜2時頃暑いということもあり少しカーテンを開け寝ていたのだが、
イヤホン越しに何か聞こえるのだ。
片耳外して聞くと、それは獣の声のような明らかに普通ではない
「ぉぉぉぉぉぉ…」と言う声が聞こえたのだ。
俺はなんかヤベーな奴が来たのかと思った矢先、
右足が何者かに掴まれたかのように痛むのだ。
しかも動かすことも出来ない。
そしてその獣の声を発する何かは近づいてくるのだ。
俺は「こんな大声出すなら誰かオーナーかだれか注意するだろ」と心で思った。
その声は1番近くまで来たらしい。

床は絨毯が引いてあるが、ススー…ススー…と足を引きずりながら、
歩く音で何となくわかった。
その後声は少しずつ遠くなっていったがまた近づいてきて来るのだ。
どうやらソレは部屋グルグル回ってるようだった。

声が遠くなったところでガチャンガチャンガチャンと
何かを揺する音が聞こえた。
多分ソレはロッカーを揺らしているのだろう。
声を上げながらロッカーを揺らし近づいてくるのだ。
その時俺はカーテンの反対側を見て動けずにいた。
体が瞬間的に振り向いてはいけないと言ってるようで、
俺もこれは人間じゃないと思っていた。
そして片耳だけのイヤホンを両耳にし、震える手で音楽をかけた。
少し心が安らいだがそれもつかの間だった。
「ぉぉぉぉぉぉぉ…」
という声が頭の後ろからするのだ。
きっと寝返りなんて打ったら目の前にいるだろうと言う距離。
もうやばい。
イヤホンしてても聞こえてくる声に消えろ消えろ…と心で叫び祈っていたが、
ソレは俺のロッカーを揺らし始めた。
ガチャンガチャンガチャンガチャン!!
これだけうるさければ、他の寝ている人も注意するだろうと言うレベルなのだ。

それがどれだけ続いたか分からない。
気づいた時にはロッカー揺らす音も声も聞こえなくなっていた。
なんだったんだ…と思い、時計を見ると4時を少し過ぎていた。
今回は一体何がしていたのか分からないが多分人ではないと思う。
とりあえず落ち着いたのでホッとしまた寝ようと思い横になった。
「とりあえずいなくなったっぽいから寝るか」
「まだいるよ」
後ろからその声が聞こえた。
全身鳥肌立ったと思うと気を失ってしまったようで、
気づいたら周りから支度する音が聞こえ目が覚めた。

その日はとりあえず実家に帰り次の日霊感のある友人にお話した。
友人はこう言った。
「お前が見たやつは多分そこに住みついてる霊だな」と言っていた。
そして俺が喋ろうとした時、喋りを遮るかのように友人がこう話した。
「お前右足になんか異常あったりするか?」
と言われ
「異常はないけど俺さ右側ばっかり怪我するんだよなー。
あ、そのカプセルホテルに泊まった時も右足痛かったな」
友人は「はぁ…やっぱりか 」と何かを察したようだった。

「お前のさ右足に女ついてるんだよ。
髪の長い赤い服の女が縋り付くようにニタニタ笑いながらお前の足についてる」
それを聞いて鳥肌がたった。
「冗談だろ笑」と俺は言いつつも少し心当たりがあった。
なぜそいつが右足についてるか分からないが、
実家で寝ている時夜中金縛りにあったことがある。
その時部屋のドアから、赤い服をきた長い髪の女が歩いて来るのだ。
何故か目を閉じることもできず、ドンドンそいつは近づいてくる。
そして俺の顔の前で髪を垂らし、ジーッとこちらを見てきて、
いつの間にか朝を迎えていたのだ。
友人にそれを話すと友人は憶測でこう語る。

「お前についてるその霊は強い執着心があると思う。
だからお前のカプセルホテルにいたと思われるナニかもそいつに気づき、
途中で消えたんだと思うぜ」
俺はその話を聞かされて泣きそうだった。
しかし仕事もあったため次の日には仕事に行った。
赤い服の女を引きずりながら。

俺はまだお祓いしていない。
あれ以降自分の身にまだ何も起きていないが、早くお祓いには行こうと思う。
最後に友人が俺に1つ忠告していた。

「その霊、職場で休みもらって早くお祓いしてもらえよ。
そいつ少しずつ登ってきてるぜ」

朗読: 【怪談朗読】みちくさ-michikusa-
朗読: 怪談朗読と午前二時

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